2013-01-01から1年間の記事一覧

感動してはいけない

ドリアン助川の『あん』を読んだのだが、これは文学というより道徳の教材である。どら焼き店に、元ハンセン病患者の老婆がやってきて、働き始めるという話なのだが、これはハンセン病でなくても成立する話である。 ハンセン病患者への差別というのは、これは…

生きろ、という価値観

戦時中の残虐行為への批判に対して、現在の価値観で過去を裁くなと言う人がいる。それならば、先ごろ放映された報道ドラマ『生きろ』のように、戦時中に「生きろ」と呼びかけた沖縄県知事を称えるのもおかしい。なぜならば、これも現在の平和主義や生命至上…

独立国家にあらず

坂口恭平『独立国家のつくりかた』を読んだが、これはタイトルに偽りありである。水道、電気、ガス、病院、などのインフラをどうするのかと思ったら、公共施設のものを勝手に盗むのだという。独立国家というからには、井上ひさしの『吉里吉里人』による医療…

国民栄誉賞は憲法違反である

国民栄誉賞は「法の下の平等」を定めた憲法第十四条に違反していないか。 内閣府による国民栄誉賞の規定によれば、「この表彰は、広く国民に敬愛され、社会に明るい希望を与えることに顕著な業績があったものについて、その栄誉を讃えることを目的とする」と…

「相棒」でのAED使用について

録画してあった『相棒season11』第18話「BIRTHDAY」を見たんだけど、子供を蘇生させるシーンでのAEDの使い方がまちがっていた。子供は川でおぼれて服もびしょぬれだ。AEDの電極パットを装着するには、ぬれた服を脱がせて、ぬれた体も拭かないといけない。AED…

赤い飛行船と若者の代弁者

テレ朝の『題名のない音楽会』でジミー・ペイジの特集をやってたんだけど、レッド・ツェッペリンのことを、Red(赤い)Zeppelin(飛行船)だと思っている人が多いが本当は、Lead(鉛の)飛行船という意味だと説明していた。ウィキペディアによると、Leadをさ…

人が死んでるのに映画化

映画『ダイアナの選択』であるが、これは途中でオチがわかった。というよりも、いくらなんでもこんなオチはないよな、と思ったその通りになったので、見て損した。 これと同じく高校銃乱射事件を題材にした『エレファント』という映画も見たが、カメラワーク…

作られた「大阪のおばちゃん」神話

読売新聞の「ホンマはおらん!?『大阪のおばちゃん』」という記事より。 「探偵!ナイトスクープ」のプロデューサーである松本修氏が、国立民族学博物館のPR誌「月刊みんぱく」12月号に「『大阪のおばちゃん』というフィクション」というエッセーを書いた。…

マイ・バック・ページ

「マイ・バック・ページ」は、川本三郎の原作を読んでいればべつに見なくてもいい映画だった。原作はおもしろい。暴力革命を目指していた新左翼の活動家に、「週刊朝日」や「朝日ジャーナル」の記者が活動資金をわたして支援していたという歴史はもっと知ら…

ふたりの林先生

「王様のブランチ」を見てたら「二人の林先生の新刊を紹介します」というので出てきたのが、なんかよく知らない予備校講師の林修という人と、林真理子だった。それで、どうせゴーストライターに書かせたどうでもいい自己啓発本の方がメインで紹介されていて…

海女の話じゃなかったのか

朝ドラの「あまちゃん」であるが、小泉今日子の昔話がつまらん。 「聖子ちゃんはぶりっ子だったけど女性にも大人気だったの」とか言ってて、ああ、過去というのはこういうふうに美化されるんだなあ、と思った。デビュー当時の松田聖子ほど、女から嫌われた女…

ドーベルマン奥さん

反町隆史のドーベルマンが襲ったのは、佐藤可士和の奥さんだったのか。あのマンションの家賃が高いのにもびっくりしたけど、佐藤可士和なら払えるよなあ。 佐藤氏といえばユニクロやツタヤのブランディングを手がけていることで有名であるが、これで奥さんも…

純真すぎてワロタ

『アジアの純真』(片嶋一貴監督、井上淳一脚本)というトンデモ映画を見た。シナリオがメチャクチャである。北朝鮮による拉致被害が明らかになった年、チマチョゴリを着た少女が駅でDQNにからまれて殺される。しかし死んだ少女には、そっくりの妹がいた。妹…

宮本武蔵は外道

早乙女貢の『実録・宮本武蔵』(PHP文庫)を読む。宮本武蔵に関するたしかな史料はほとんどないそうで、剣聖や求道者であったというのは作り話。本書は「殺人剣には、美などない」という立場から、そうした武蔵の偶像破壊を行っている。若い頃はただの乱暴者…

長い長い伏線

スティーブ・ジョブズの言葉である。 過去には何ら関連性のなかった点と点が、人生を歩んでいくうちに線でつながる。そういう考えを持っていると、人生に失望することはない。 池袋駅で、ウイッキーさんを見かけた。おれが子供の頃に「ウィッキーさんのワン…

NHKが右翼だった頃

本多勝一が昔に書いた 『NHK受信料拒否の論理』(未来社・1970年)を読み返してみた。本多が受信料を払わないのは、次のような理由による。 「朝鮮・中国の侵略にはじまる日本軍国主義の膨張と崩壊の過程で、日本の民衆をだまして侵略の先兵にかりたててゆく…

激おこぷんぷん大島渚

NHKのクローズアップ現代『君は“怒るオトナ”を知っているか〜映画監督・大島渚』を見る。長男の話がおもしろかった。 テレビタレントみたいになってる時があって、「あんまり下らない番組は出なくていいんじゃないの」って言ったんですよ。そしたら父が真面…

スクープとはいえない

NHKスペシャルの沢木耕太郎がロバート・キャパの写真の捏造を検証する番組を見たが、あれは先行研究をきちんと紹介しないで「最大の謎」とか「世界的なスクープ」とか煽っていたのはよくない。ほんとうにゲスなテレビ屋の仕事だと思う。なんでこんなものに沢…

ボストンテロと十二人の怒れる男

ボストンのテロ事件の犯人がチェチェン人の兄弟だったということで思い出したのが、ニキータ・ミハルコフ監督の映画『十二人の怒れる男』である。これはシドニー・ルメットの名作をリメイクしたもので、舞台をロシアに置きかえ、そして容疑者はチェチェン人…

ゴドーを待ちながら

不条理劇の傑作であるサミュエル・ベケットの『ゴドーを待ちながら』は二幕の芝居である。一本の木がある田舎道で、二人の男がゴドーを待っている。やがてポッツォとラッキーという二人連れの男が現れる。ポッツォはラッキーを奴隷のように扱っている。彼ら…

東大教授の馬と鹿

『サイゾー』の4月号に姜尚中と、上野千鶴子のゴシップが載っている。姜尚中は、研究室宛てに批判や脅迫の手紙などが「週にダンボール箱単位という規模」で届いていたという。こいつのことが嫌いなのは俺だけじゃないとわかって安心した。 上野千鶴子も、い…

吉本隆明という共同幻想

客「呉智英の『吉本隆明という「共同幻想」』をどう思うね」 主「思ったよりよかった。呉智英はネタの使い回しが多いから、しばらく読んでなかったんだ。吉本隆明批判も、それまでの随筆で何度かやってるけど、どうもピントがずれているような気がした。しか…

ヨイトマケ異論

美輪明宏「ヨイトマケの唄」であるが、これは母ちゃん孝行の唄ではあるけれど、貧しい土方の家を底辺として、その息子は親の後を継ぐことなく、猛勉強して大学を出てエンジニアになることを立身出世の美談としているわけであるから、やっぱり土方を差別して…

ヤンキーの子はヤンキー

ETV特集「復興を誓う 命のダンス」というのを見て、憫笑した。ヤンキーだった元小学校教師が主宰する「よさこい踊り」の団体では、四百人を超える子供たちが、五千円の月謝でダンスを習っているという。ダンスを教えているのは元ヤンキーの姉ちゃんで、元小…

カルトもいろいろ、人生もいろいろ

佐藤典雅『ドアの向こうのカルト-9歳から35歳まで過ごしたエホバの証人の記録』を読む。著者は、東京ガールズコレクションを手がけたプロデューサーで、副題の通りの内容である。エホバの証人というのは、輸血拒否事件で有名になったが、この世はサタンに支…

天国と地獄のような 

長野県の「しなの鉄道」で、沿線に植樹されていた桜の木が何者かによって伐採された。現場は鉄道写真を撮るのに絶好のロケーションであることから、何者かが撮影のために、邪魔になる桜の木を切ったのではないか、と言われているようだ。そういえば私も、よ…

芸がまずいと叱られて

NHKでは『フレ☆フレ』と『明日へ-支えあおう』という番組で、宮城県気仙沼の児童劇団を取り上げていた。震災の体験をミュージカルにして、東京で公演したのだという。 震災の記憶を風化させないために、という思いはいいが、それに子供たちを使うのはいかが…

子供の将来は、親の学歴と年収で決まる

「一万時間の法則」というのをネットで知ったので、その種本というマルコム・グラッドウェル『天才!成功する人々の法則』を読んでみた。あの勝間和代が訳して推薦もしている。 専門的な技能を身につけるためには一万時間が必要らしい。モーツァルトもビート…

芋虫の盗作映画

若松孝二の『キャタピラー』を見たのだが、じつに低俗な映画であった。エログロのシーンがほとんどである。なにが反戦映画か。 出征していた夫が四肢を失って帰郷した、という設定の他にはどこも見るべきところがない。この設定だって江戸川乱歩の『芋虫』で…

MITの授業がおもしろ科学実験だった件

「MIT白熱教室」という番組の第一回目を見た。マサチューセッツ工科大学(MIT)といえば、世界最高峰の理系大学でしかもその物理学の授業というのであるから、どれだけすごいものが見れるのかと期待していたら、重力とかエネルギー保存の法則とか、中学校で…