ドリアン助川の『あん』を読んだのだが、これは文学というより道徳の教材である。どら焼き店に、元ハンセン病患者の老婆がやってきて、働き始めるという話なのだが、これはハンセン病でなくても成立する話である。
ハンセン病患者への差別というのは、これはもう本当にひどい差別である。言語道断で、あらゆる差別の中でも最悪のものである。そうした老婆の悲惨極まりない人生が、こんなよくある人情話で、報われたりするものか。作者が、ハンセン病患者の気持ちを代弁するなど、思い上がりでしかない。我々は皆、加害者である。
松本清張の『砂の器』なんかも、なにが名作なものか。
- 作者: ドリアン助川
- 出版社/メーカー: ポプラ社
- 発売日: 2013/02/06
- メディア: 単行本
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