ボストンテロと十二人の怒れる男

 ボストンのテロ事件の犯人がチェチェン人の兄弟だったということで思い出したのが、ニキータ・ミハルコフ監督の映画『十二人の怒れる男』である。これはシドニー・ルメットの名作をリメイクしたもので、舞台をロシアに置きかえ、そして容疑者はチェチェン人の少年ということで政治色の強い内容となっている。
 とはいえストーリーはオリジナルとほぼ同じなので、殺人容疑をかけられた少年は、陪審員の判断によって、無罪となり釈放される。少年はチェチェン紛争の中で、ロシア軍によって親を殺されている。陪審員の大人たちがこの少年を無罪としたのには、自国が犯した罪への贖罪があるのかもしれない。
 しかし紛争によって母国を追われた兄弟が、アメリカに渡り、そこでテロを行ったのだとすると、映画で描かれた善意は現実によって裏切られた。