独立国家にあらず

 坂口恭平『独立国家のつくりかた』を読んだが、これはタイトルに偽りありである。水道、電気、ガス、病院、などのインフラをどうするのかと思ったら、公共施設のものを勝手に盗むのだという。独立国家というからには、井上ひさしの『吉里吉里人』による医療立国や、筒井康隆の『美藝公』による映画立国のようなアイデアを期待したのだが、坂口のものはDIY精神やヒッピー・カルチャーの焼き直しである。
「都市の幸」を採集するホームレスの生活を、「海の幸、山の幸」で生きる狩猟民族になぞらえているのだが、国家が衰退すればたちまち「都市の幸」もなくなるわけで、これは独立どころか国家に寄生しているだけである。こうした寄生虫どもを、かつては革命の敵と呼んだのではなかったか。
 それでも乞食になりたければ、なればいい。誰も止めはしない。

独立国家のつくりかた (講談社現代新書)

独立国家のつくりかた (講談社現代新書)