純真すぎてワロタ

アジアの純真』(片嶋一貴監督、井上淳一脚本)というトンデモ映画を見た。シナリオがメチャクチャである。北朝鮮による拉致被害が明らかになった年、チマチョゴリを着た少女が駅でDQNにからまれて殺される。しかし死んだ少女には、そっくりの妹がいた。妹は男子高校生を誘って、復讐のために無差別テロを計画する。
 で、偶然、工事現場から旧日本軍が製造したマスタードガスが発見される。なぜかビール瓶に入っていて、しかもコルクの栓がしてある。それが何十年も土の中に埋まっていたのである。
 で、二人は夜になるのを待ち、工事現場に忍び込んでマスタードガスをスコップで掘り出そうとする。するとそこに偶然、変な青年が現れて、「もうすでに僕が掘り出したよ、いるならあげるよ」と言うので、もらう。青年は十数本ものマスタードガス入りビール瓶を掘り出して、車の荷台に積んでいた。
 さて、いよいよテロである。少女と少年は、拉致被害者の集会が行われている会場に乗り込んで、マスタードガス入りのビール瓶を投げつけて割るのであるが、その時の装備がマスクだけである。巻き添えを食らって自分らも死ぬと思うよな? でも、死なない。マスタードガス、なめんな。ここまでで三〇分。まだ一時間以上もあんのか。
 このあと、少女と少年は日本人を無差別にぶっ殺しながら、放浪する。でも少女が警官に捕まりそうになり、少年は助けるために警官にマスタードガス入りビール瓶をぶつける。この頃になると監督もめんどくさくなったのか、マスクさえしてない。それで毒ガスの煙がもうもうとする中で、警官だけが死んで、少女と少年は逃げ出す。しかし、警官の撃った弾丸が少女の胸に当たる。死ぬと思うよな? でも死なない。で、二人で小舟に乗って、海を渡って、どこか別の国に行こうとする。
 すると本当に、どこだかわからない外国にたどり着いて、そこはなぜか戦争をしていて、少年も銃を持って戦う。それで誰だかわからない兵士から原爆をもらう。少年は原爆を持ったまま電車に乗って、東京タワーに行き、展望台でそれを爆発させる。すると、海の底にいた原子力潜水艦から核ミサイルが発射されて、世界各国も核ミサイルを撃ち合って、エンド。
 商業映画を批判し、自分の撮りたい映画を撮る、という志は立派だし、下積みが長くて苦労をしてるのにも同情するけど、客をなめんな。青山真治は、「痛ましい問題作」だとこの映画を評しているが、こんな幼稚な映画を作る大人たちこそ、痛ましい。