教育は個人間の格差を拡大させる

 安藤寿康『日本人の9割が知らない遺伝の真実』を読んだ。以下引用。

 教育の役割は、知識のない人に知識を、能力のない人に能力を身につけさせることと考えられます。
 文字を知らない人たちに文字を教え、計算のできない人に計算能力を身に着けさせ、宗教を、思想を知らない人に、それを説いて聞かせる。するとそれを持たなかった人たちは、それを同じように身につけ、成長してくれる。
 しかし忘れられがちなのは、人々のばらつき、個人差です。
 たしかに全体としての知識や能力は上がります。しかし同時に、教育は往々にして個人間の格差を拡大させる方向に働くということです。教育だけではありません。一般にあらゆる文化的な仕組みは、それまで潜在的であった知識や能力の個人差をあからさまにし、そのばらつきを広げることに寄与しているのです。(140頁)

 教育が一部の人にしか与えられないときは、能力や知識の個人差は、その教育を受けたか受けなかったかという環境の差で説明される割合が大きいでしょう、しかし教育があまねく行き届いたとしたら、そのときに顕在化するのが遺伝的な差なのです。(141頁)

 生まれつきの素養がある人は教育によってぐんと伸びる、その一方、素養がほとんどない人はあまり伸びないという、残酷な事実を告げているともいえます。(141頁)

 これはまあ、そうであろう。したがって教育とは、人を誰しも等しく賢くするものではなく、能力のある者同士を競い合わせて、ひとりの「超人」を生み出すためのものである。

日本人の9割が知らない遺伝の真実 (SB新書)

日本人の9割が知らない遺伝の真実 (SB新書)

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