橘玲『もっと言ってはいけない』を読む。
前著は挑発的でおもしろかったが、続編は「もっと不愉快な本」という触れ込みのわりには期待はずれ。
科学的な証拠(エピデンス)というが、たとえば「利己的な遺伝子」にしても、真木悠介『自我の起原』を読むと、科学者の考える「利己的」がじつは「利他的」であるという、まったく逆の解釈も成り立つ。
しかしながら橘玲の著作は、私にとって不愉快でもなんでもなく、むしろ勇気付けられる。
第六章によれば、日本人の大半は「うつ病の遺伝子」を持っている。うつ病や自殺は社会が原因であるとの説明もできるが、遺伝子がそういう社会を作ってしまうのかも知れない。
この「うつ病の遺伝」は、感受性の強い遺伝子だという。たとえるなら「ラン」の花のようなもの。
タンポポはストレスのある環境でもたくましく育つが、その花は小さく目立たない。しかしランはストレスを加えられるとすぐに枯れてしまうものの、最適な環境では大輪の花を咲かせる。
日本人は遺伝的に、特定の環境では大きな幸福感を得ることができるものの、それ以外の環境ではあっさり枯れてしまう「ひ弱なラン」なのだ(235頁)。
日本人の不幸は、遺伝的にストレスに弱いにもかかわらず、文化的に高ストレスの環境を作ってしまうことにある。そんなムラ社会の閉塞感の中で、本来はランとして美しい花を咲かせるべき個人が次々と枯れていく(237頁)。
だから「置かれた場所で咲きなさい」というのはだめで、うつ病になるような場所からはさっさと逃げ出して、自分に適した環境を見つけて、大輪の花を咲かせましょう。
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