読書

自衛隊は憲法違反である

SEALDsが、日本の政治や歴史を学ぶための書籍十五冊というのを発表した。そのメンバーによれば、「自由や民主主義を議論する時、土台として知識を共有できる本をみんなで選んだ」ということらしい。この中に芦部信喜の『憲法 第六版』(岩波書店)も含まれて…

トンビがタカを生む法則

『たまたま――日常に潜む「偶然」を科学する』レナード・ムロディナウ著/田中三彦訳(ダイヤモンド社)を読む。 フランシス・ゴールトンが発見した「平均回帰」という法則がおもしろかった。 背の高い父親から生まれた息子は、たいていその父より身長が低くな…

紋切型ばんざい

客「武田砂鉄の『紋切型社会』を読んだかね?」 主「立ち読みで、放り出した。フローベールの『紋切型辞典』やビアスの『悪魔の辞典』があるのに、なんでわざわざそんなのを読まなくちゃならない」 客「まあそう言うなよ。本田靖春と竹中労が好きで、紋切型…

リンリ、リンリと鈴虫が鳴く

永井均は倫理に反することを平然と書く。たとえば次のように。 なぜ人を殺してはいけないか。これまでその問いに対して出された答えはすべて嘘である。道徳哲学者や倫理学者は、こぞってまことしやかな嘘を語ってきた。ほんとうの答えは、はっきりしている。…

ショーほど素敵な商売は

バーナード・ショーの「ピグマリオン」と「聖女ジョウン」を読んだら、びっくりするほどつまらなかった。ノーベル賞を受賞しているのだから、もっとおもしろいものを書いてほしい。

狂犬病の病原体はありまぁす

子供の頃に伝記を読んで、野口英世というのは立派な人だと思っていたのだが、大人になってがっかりした。 最初は、渡辺淳一の『遠き落日』を読んで、こりゃひどい性格破綻者だと知った。それでも立派な業績を残したことは偉大だと思った。ところが、福岡伸一…

あなたもムスリムになれる

中田考『イスラーム生と死と聖戦』(集英社新書)を読んだら、ムスリムには誰でもなれると書いてあった。 ムスリムには、国籍も血統も関係なく、誰でもなれます。入会手続きも入会金も必要ありません。二人のムスリムの立会いのもとで、「ラーイラーハイッラ…

分人的な事情により

平野啓一郎『私とは何か――「個人」から「分人」へ』を読む。人はさまざまな場面で、キャラを演じ分けているが、はたして本当の自分はどれだろうか、という悩みがつねに付きまとう。そこで著者は「分人」という概念を提出する。 たった一つの「本当の自分」な…

行動経済学的にありえない

岡田斗司夫の『「いいひと」戦略』(マガジンハウス)を読む。 いい人には女も金も寄ってくる。だから自分がいい人であることをアピールしまくりましょうという内容である。たしかに悪人と思われるより、いい人と思われた方が得である。すべての人が「いいひ…

環境保護、害虫、人間

レイチェル・カーソンの『沈黙の春』といえば、環境問題を告発した名著として知られる。農薬や殺虫剤として使われていたDDTの、環境への悪影響を告発した。 DDTは、長期間にわたり土壌や水循環に残留し、食物連鎖を通じて人間の体内にも取り込まれる。発ガン…

人権守って、人類滅ぶ

舞鶴女子高生殺害事件で逮捕された男は、裁判で無罪となった。ところが釈放後、今度はホテル経営者の女性を刃物でメッタ刺しにした容疑で逮捕された。この男の経歴には、他にも殺人などの前科があったことから、先の無罪判決は間違っていたのではないかと言…

なっきー主義

内山奈月X南野森『憲法主義』を読む。小生は、AKB48というものにまったく興味がわかないので、内山奈月さんのことも存じ上げなかったのだが、じつに頭のよいお嬢さんである。 集団的自衛権に関して、 アメリカと仲よくやっていかないと、日本の平和は守れな…

トラウマなんてないよ

『嫌われる勇気』という本が売れているというので読んでみた。 アドラー心理学では、トラウマを否定し、「目的論」の立場を取る。 たとえば「自分は両親に虐待を受けたから、社会に適応できないのだ」と考えて、引きこもっている青年がいる。虐待を受けたと…

人を殺した人のまごころ

河合幹雄『終身刑の死角』を読む。たとえば「有罪率99%」というデーターをもとに検察批判をする人がいるが、それはまちがいであることが本書を読めばわかる。 逮捕されたらすべて有罪になるなどということはない。その反対に、刑務所には、なかなか入れない…

ドツボからの脱出法

長谷正人『悪循環の現象学――「行為の意図せざる結果」をめぐって』を読む。 「行為の意図せざる結果」とは、「ある目的に向かって努力すればするほどかえって目的から遠ざかってしまうような現象」のことを言う。たとえば、「寝るぞ」と思って床に就いて、寝…

それでも僕は浄水器を売る

水野敬也の『それでも僕は夢を見る』という本を読んだので、感想を書いてみたいと思います。 主人公の「僕」は、「ユメ」に出会って、浄水器とか空気清浄機を売るようになります。しかし思うようには売れず、友達はなくすし、借金は増えるし、きびしい現実に…

世界よ、これがおもてなしだ

NHKの「探検バクモン」で、爆笑問題が新橋花街を訪れていた。「格式高い花街には、現在にもおもてなし文化が脈々と受け継がれています」とのことらしい。そんな格式高いお茶屋や料亭が、よくぞこんなお笑い芸人ふぜいを座敷にあげたものだと感心した。 郷ひ…

幻想の英雄たち

ゴーストライターというので思い出すのは、津田信の『幻想の英雄』という本で、これは小野田寛郎のゴーストライターをしていた著者がその真相を暴露したもので、おれは学生の頃に読んで衝撃を受けた。 ネットで全文公開されている。 『幻想の英雄』の時も、…

テレビ東京を見直す

高橋弘樹『TVディレクターの演出術』(ちくま新書)を読む。 どうせ、ヤラセは悪くないだの、おもしろければなんでもOK、とかいうような、浅はかで露悪的な自慢話を聞かされるのだろうと期待せずに手に取ったら、まったくちがっていた。なにしろ著者はTVディ…

ラサールなんとか

ラ・サールといえば進学校で知られるが、わが国におけるラ・サール会による学校運営の本格的な始まりは、戦後、仙台で設立された孤児院からである。その孤児院で育った井上ひさしは、カナダ人修道士たちの献身的な態度を、次のように記している。 わたしが信…

お前それタモリの前でも同じ事言えんの?

樋口毅宏『タモリ論』のamazonでの評価がボロクソなので、どれほどひどいのかと読んでみたら、なるほどこれはひどい。 「笑っていいとも」のような「身にならない」番組を何十年もやっててキチガイにならないタモリは絶望大王で、たけしの芸はぜんぶパクリで…

踊る阿呆に

佐々木中『踊れわれわれの夜を、そして世界に朝を迎えよ』を読む。 もともとそういう素質があったのか、ますますアジテーターのようになっている。表題のインタビュー記事は、風営法によるクラブ営業の規制に対する反対意見を述べたものだが、その根拠として…

平和主義者の暴力

松元雅和『平和主義とは何か』(中公新書)を読む。平和主義という言葉の響きには、どうも理想論に過ぎないものを感じるのだが、これを読んでもその感じはぬぐいきれなかった。いかなる暴力も認めないというガンジーやキング牧師を「無条件平和主義」だとす…

低俗なものの勝利

大衆文化とは何か。その答えのひとつが、ジェーン&マイケル・スターン『悪趣味百科』(新潮社・伴田良輔監訳)にある。つまり、悪趣味なのだ。「品の良いものよりも、悪趣味なもの」が求められ、世界を席巻している。 アメリカは、悪趣味の宝庫である。本書…

感動してはいけない

ドリアン助川の『あん』を読んだのだが、これは文学というより道徳の教材である。どら焼き店に、元ハンセン病患者の老婆がやってきて、働き始めるという話なのだが、これはハンセン病でなくても成立する話である。 ハンセン病患者への差別というのは、これは…

独立国家にあらず

坂口恭平『独立国家のつくりかた』を読んだが、これはタイトルに偽りありである。水道、電気、ガス、病院、などのインフラをどうするのかと思ったら、公共施設のものを勝手に盗むのだという。独立国家というからには、井上ひさしの『吉里吉里人』による医療…

NHKが右翼だった頃

本多勝一が昔に書いた 『NHK受信料拒否の論理』(未来社・1970年)を読み返してみた。本多が受信料を払わないのは、次のような理由による。 「朝鮮・中国の侵略にはじまる日本軍国主義の膨張と崩壊の過程で、日本の民衆をだまして侵略の先兵にかりたててゆく…

ゴドーを待ちながら

不条理劇の傑作であるサミュエル・ベケットの『ゴドーを待ちながら』は二幕の芝居である。一本の木がある田舎道で、二人の男がゴドーを待っている。やがてポッツォとラッキーという二人連れの男が現れる。ポッツォはラッキーを奴隷のように扱っている。彼ら…

ある喪失感

客「呉智英の『吉本隆明という「共同幻想」』をどう思うね」 主「思ったよりよかった。呉智英はネタの使い回しが多いから、しばらく読んでなかったんだ。吉本隆明批判も、それまでの随筆で何度かやってるけど、どうもピントがずれているような気がした。しか…

カルトもいろいろ、人生もいろいろ

佐藤典雅『ドアの向こうのカルト-9歳から35歳まで過ごしたエホバの証人の記録』を読む。著者は、東京ガールズコレクションを手がけたプロデューサーで、副題の通りの内容である。エホバの証人というのは、輸血拒否事件で有名になったが、この世はサタンに支…