読書

お前それタモリの前でも同じ事言えんの?

樋口毅宏『タモリ論』のamazonでの評価がボロクソなので、どれほどひどいのかと読んでみたら、なるほどこれはひどい。 「笑っていいとも」のような「身にならない」番組を何十年もやっててキチガイにならないタモリは絶望大王で、たけしの芸はぜんぶパクリで…

踊る阿呆に

佐々木中『踊れわれわれの夜を、そして世界に朝を迎えよ』を読む。 もともとそういう素質があったのか、ますますアジテーターのようになっている。表題のインタビュー記事は、風営法によるクラブ営業の規制に対する反対意見を述べたものだが、その根拠として…

平和主義者の暴力

松元雅和『平和主義とは何か』(中公新書)を読む。平和主義という言葉の響きには、どうも理想論に過ぎないものを感じるのだが、これを読んでもその感じはぬぐいきれなかった。いかなる暴力も認めないというガンジーやキング牧師を「無条件平和主義」だとす…

低俗なものの勝利

大衆文化とは何か。その答えのひとつが、ジェーン&マイケル・スターン『悪趣味百科』(新潮社・伴田良輔監訳)にある。つまり、悪趣味なのだ。「品の良いものよりも、悪趣味なもの」が求められ、世界を席巻している。 アメリカは、悪趣味の宝庫である。本書…

感動してはいけない

ドリアン助川の『あん』を読んだのだが、これは文学というより道徳の教材である。どら焼き店に、元ハンセン病患者の老婆がやってきて、働き始めるという話なのだが、これはハンセン病でなくても成立する話である。 ハンセン病患者への差別というのは、これは…

独立国家にあらず

坂口恭平『独立国家のつくりかた』を読んだが、これはタイトルに偽りありである。水道、電気、ガス、病院、などのインフラをどうするのかと思ったら、公共施設のものを勝手に盗むのだという。独立国家というからには、井上ひさしの『吉里吉里人』による医療…

NHKが右翼だった頃

本多勝一が昔に書いた 『NHK受信料拒否の論理』(未来社・1970年)を読み返してみた。本多が受信料を払わないのは、次のような理由による。 「朝鮮・中国の侵略にはじまる日本軍国主義の膨張と崩壊の過程で、日本の民衆をだまして侵略の先兵にかりたててゆく…

ゴドーを待ちながら

不条理劇の傑作であるサミュエル・ベケットの『ゴドーを待ちながら』は二幕の芝居である。一本の木がある田舎道で、二人の男がゴドーを待っている。やがてポッツォとラッキーという二人連れの男が現れる。ポッツォはラッキーを奴隷のように扱っている。彼ら…

ある喪失感

客「呉智英の『吉本隆明という「共同幻想」』をどう思うね」 主「思ったよりよかった。呉智英はネタの使い回しが多いから、しばらく読んでなかったんだ。吉本隆明批判も、それまでの随筆で何度かやってるけど、どうもピントがずれているような気がした。しか…

カルトもいろいろ、人生もいろいろ

佐藤典雅『ドアの向こうのカルト-9歳から35歳まで過ごしたエホバの証人の記録』を読む。著者は、東京ガールズコレクションを手がけたプロデューサーで、副題の通りの内容である。エホバの証人というのは、輸血拒否事件で有名になったが、この世はサタンに支…

子供の将来は、親の学歴と年収で決まる

「一万時間の法則」というのをネットで知ったので、その種本というマルコム・グラッドウェル『天才!成功する人々の法則』を読んでみた。あの勝間和代が訳して推薦もしている。 専門的な技能を身につけるためには一万時間が必要らしい。モーツァルトもビート…

いじめを見たらすぐ通報

内藤朝雄『いじめ加害者を厳罰にせよ』を読む。著者の提言には、ほとんど賛成である。 いじめられたら、警察に通報せよ。いじめるやつらは赤の他人、敵である。遠慮する必要などない。法によって徹底的に処罰されるべきだ。そのためには警察が動きやすいよう…

二匹のタヌキ

ノゾエ征爾『○○トアル風景』を読んだが、あとがきがおもしろかった。 ENBUゼミナールで松尾スズキに教わっていたとか、「松尾スズキさんのことは勝手に師匠と思わせていただいてます」とか、ケラの作品に出演したとか、「この流れで、その後の僕の活動を支え…

十五の夜這い

Aliの『十五』というケータイ小説を読む。これは、映画『家族ゲーム』に端役で出ていた前川麻子が別名義で書いたもので、15才の時に出会ったある有名男優との関係をつづっている。窓の鍵をあけて待っていると、その男優は夜中に忍んできたという。まるで夜…

小山田圭吾のいじめを次世代に語り継ぐ

毎年この時期になると、戦争体験や被爆体験を語り継ぐイベントが各所で催されている。戦争の悲惨さ、残酷さを忘れず、これを歴史の教訓として次世代に引き継ぎ、戦争のない平和な社会を目指そうという試みである。 どれほど悲惨な体験であっても、時の流れの…

たいした罪にならない

藤井誠二『 「悪いこと」したら、どうなるの? 』(イースト・プレス)を読む。 第四章「『少年法』が改正されたのはなぜ?」から適宜引用する。 1996年、当時16歳の高校生・武孝和君が教室で文化祭の後片付けをしていた。そこへ、他校の生徒六人がやってき…

巨匠の回顧録

橋本忍『複眼の映像-私と黒澤明』(文春文庫)を読む。芝居がかった大仰な文体に辟易する。 「黒澤明という男-それは閃きを掴む男である」だとか、シナリオに行き詰って旅に出て瀬戸内海を見つめていると、「その私の全身を、一瞬だが小倉百人一首の一首が戦…

元ジャーナリスト

上杉隆の手元には、政治記者たちが政権幹部などをオフレコで取材した40万枚にも及ぶメモがあるという。「上杉リークス」と称しているのだとか。 実はこの膨大な量に上る各社の(1社ではない)メモが、極めて希少なソースを通じて、私の手元に10年以上ほぼ毎…

どこに批評の根拠をおくか

「文芸春秋」で田中慎弥と西村賢太の対談を読む。以前からお二人のファンであったのだが、ここまで評価を受けるともう興味を失ってしまう。ファン心理というのは残酷なものだ。 芥川賞では、西村賢太と朝吹真理子、田中慎弥と円城塔、というまったくタイプの…

大都会は阿修羅のごとく

向田邦子の『阿修羅のごとく』(1979年)の冒頭は、心理描写の手本としてよく言及される。滝子が姉と電話で会話をしながら、曇ったガラス窓に「父」と書く。セリフで説明するのではなく、アクションで見せる。みごとな描写である。 ●図書館(朝) 冬の朝。 …

差分はスゴ本

佐藤雅彦『差分』を読む。これはなんとも、奇妙な本である。ページには二枚の簡単なイラストが並んでいるだけなのだが、その静止画のイラストが、動いて見えるのである。アニメーションが見せる動きとも、ちがう。脳の中にまったく別の映像が浮かんでくる感…

ジャズもロックもクラシックである

森本恭生『西洋音楽論』を読む。音楽についての通説を根底から覆す本である。 フランス革命以前のヨーロッパ音楽は、ほんの一握りの貴族階級のためのものだった。そこでは、演奏方法などについて、楽譜には書かれない夥しい数の暗黙の了解事項(しきたり)が…

久世塾(笑)

図書館で『久世塾』なる本を見つける。久世光彦が2000年にやっていたシナリオライター養成講座の講義録である。とはいえ久世の講義らしきものはなく、ゲスト講師の談話をまとめたものである。どれも雑誌のインタビュー記事程度の内容である。 授業料は約24万…

作務衣でろくろを回すバカ

おれはグルメに興味がないので、これまでにラーメン屋に行ったことが十回くらいしかない、と知人に話したらおどろかれたことがある。逆におれからすれば、なんでみんなそんなにラーメンなんかが好きなの? と思うわけだが。 速水健朗『ラーメンと愛国』を読…

かしこい選択してると思うなよ

シーナ・アイエンガー『選択の科学』を読む。これも「白熱教室」の先生の本である。 心理学を基礎としているので眉唾なところも感じるが、選択をめぐるエピソード集としておもしろい。「第5講 選択は創られる」と「第7講 選択の代償」は、テレビ放送にはな…

山田洋次はつらいよ

おれも近頃では丸くなって山田洋次の映画なんかも見るようになったのだが、寅さんだかなんだか、ああいう世界はどうにも、きもち悪くていけねえ。 切通理作『山田洋次の』(ちくま新書)を読んだ。 山田洋次が助監督時代に書いた『睡い』というシナリオが紹…

プライドにとって賛美とは何か

たかがスポーツ選手の活躍を、我々はなぜあれほどまでに手放しで賛美できるのだろうか。猛練習によって甲子園に出場した高校生は地元の誇りであるが、方や、猛勉強によって東大に合格した高校生は、賞賛されるどころかその成功をねたまれ、存在を無視される…

オーディオとか

学生の頃に、友人の家に遊びにいったら、そいつの家は金持ちだったから部屋には立派なオーディオセットがあった。うらやましくてしょうがなかったが、しかしレコードラックを見ると、どれもしょーもない流行歌ばかりで、ブタに真珠だと思った。 それ以来、ど…

科学とは何なんですか

ぶっちゃけ、カール・ポパーのいう反証可能性というのが、よくわからない。だれか、バカにもわかるように説明してくれないか。 「反証可能性を持つ仮説のみが科学的な仮説である」というのは、なんとなくわかる。わかったつもりで、科学とは仮説である、と考…

お山の大将の迷信

君塚良一『「踊る大捜査線」あの名台詞が書けたわけ』(朝日新書)に、こんな話がある。 萩本欽一は、「三つの運は同時に来ない」と考えている。三つの運とは、仕事・健康・家庭(恋人)。 「神様は、ぼくたちに平等に運を与えてくれる」。しかし、神様は一…

ジャズのようなもの

マイク・モラスキー『戦後日本のジャズ文化』(青土社)を読む。 著者はアメリカ人。戦後の日本文化に通じていて、ジャズピアニストでもある。ジャズの原点はライブ演奏とコミュニケーションだ、という著者のジャズ観には、説得力がある。 ところが、戦後日…

演歌という発明

輪島裕介『創られた「日本の心」神話』(光文社新書)を読む。 「演歌は日本の心」などと言うが、「演歌」が生まれたのは1960年代後半であり、たかだか40年程度の歴史しかない。演歌は、いかにして「日本独自の国民的」ジャンルとなったのか。著者はそれを膨…

アントレプレナー(笑)

泉美木蘭『会社ごっこ』(太田出版)を読む。 著者は大学卒業後に上京して、渋谷のベンチャー企業に就職。しかしそこはすでに倒産状態で、退職。しかしパーティーで知り合った「スゲーやつ」に誘われて、会社設立を手伝うことになる。その「スゲーやつ」とは…

安っぽい小説

角田光代の「八日目の蝉」を読んだけど、あまりのくだらなさにびっくりした。スカスカの文章に、ばからしいストーリー。ご都合主義の展開ばかりで、サスペンスもなにもない。 ラストに「安っぽい小説みたい」というセリフが出てくるが、それはこの小説のこと…

落語は笑えない

広瀬和生『落語評論はなぜ役に立たないのか』(光文社新書)を読む。 「寄席は面白くない」のではない。「面白いときもあるし、そうでないときもある」。面白い落語家を教えるから、寄席に行け。と著者は書く。だとすると、本書は評論ではなく、ガイドブックか…

寿命のローソク

子供の頃に見たアニメで、すごいこわいシーンがあった。 男がある場所に行くと、そこには、火のついているローソクがいっぱいある。このローソクの炎が人の寿命を表しているという。つまり、ローソクが燃え尽きたら、その人は死ぬというわけだ。いっぱいある…

罰とは何か

いいこと考えた。とはいえ、オレが考えたわけではなく、考えたのは川崎徹氏である。 『大人の学校・入学編』(静山社文庫)のなかで、こう述べている。 例えば、これも最近考えた話なんですけど、最近はいろんな犯罪がありますよね。子供の大学の入試で裏工…

推理小説はバカらしい

推理小説にはくだらぬものが多いが、誰が言い出したのか、ネタバレはいけないという風潮があって、どこがどう、くだらぬかを具体的に書くことができない。しかし、くだらないものは、くだらないのであり、そういうことをはっきり書いたほうが、読者もくだら…

仏教はバカらしい

横山紘一『十牛図入門』(幻冬舎新書)を読む。 「十牛図」という禅の入門図があって、本書はそれを「唯識思想」によって解説している。 おれは仏教というのは勉強しても得るものがなにもないと思ってるので、こういう本を読んでもまったく改心しない。困った…

悟りとは何か

悟りというのは、「一切は空である」ということを知ることだ。知ったからといって、どうにかなるわけではない。 釈尊は菩提樹の下で悟りを開いた。そしてその喜びのまま成仏したいと願った。 ところがそこに梵天が現れて、「衆生の救済のために、その法を説…

ホームドラマとか

小林竜雄『久世光彦vs.向田邦子』 (朝日新書)を読む。 『時間ですよ』の原作は橋田壽賀子で、最初の脚本も橋田が書いていた。しかし、久世光彦の演出が気に入らず、ケンカして4回で降板。銭湯で女の裸が出ることが我慢できない、マチャアキと樹木希林のコン…

よりぬき霊言

『週刊文春』2月3日号。 大川隆法総裁 夫人 ついに明かした「教組の私生活 カネと女 」 最近、大川総裁の公の場における活動として、目立つのが「霊言」だ。きょう子夫人はこう話す。 「坂本龍馬、マッカーサー、金丸信、最近は菅直人首相や宇宙人の霊までも…

ちがうものを見ている

別役実は、「演劇とユーモア」というエッセイで、次のような寓話を紹介している。 十年前から芝居が病みつきになって、シーズンごとに劇場に通わずにはいられなくなった男がいた。 或る男が興味をもって「十年前に何を見たんだい?」と聞いてみた。 「いや、…

死ぬのがこわい

テレビには、いやなやつばかりが出ている。それでも、ああ、この人たちもいずれ死ぬんだなあ、と思うと、少しは気が晴れる。 時々僕は自分が一時間ごとに齢を取っていくような気さえする。そして恐ろしいことに、それは真実なのだ。 (村上春樹『風の歌を聴け…

推理小説を読む阿呆に書く阿呆

森博嗣の『小説家という職業』(集英社新書)。 これは小説家になるための指南書なのだろうが、森博嗣はこう書いている。 「もしあなたが小説家になりたかったら、小説など読むな」 これは逆説でも皮肉でもなくて、森は本当にそう確信しているようだ。「小説…

思い出の綿矢りさ

大塚英志『大学論』(講談社新書)より引用。 ぼくは以前、金原ひとみが話題となった時、彼女の小説をそれよりずっと前、同人誌で目にしていたことのある老批評家が、こういう自傷行為をカミングアウトするような表現をせざるを得ない幼さや危うさを抱えたま…

優しくない三谷幸喜

三谷幸喜・脚本の芝居『君となら』の元ネタは、アラン・エイクボーンの『レラティブリー・スピーキング』(邦題「こちらがあたしのお父さん」「パパに乾杯」)だと気づいた。よくできた脚本だと思ったが、その「よくできた」部分は、エイクボーンのアイデア…

山頭火という俗物

種田山頭火の、書を見たことがある。 べつにそれが目当てではなく、とある展覧会に行ったら、会場の一角に展示してあった。 短冊に筆と墨で、「まつすぐな道でさみしい」だの「分け入つても分け入つても青い山」だの、くだらぬ俳句が書いてあった。その字が…

「愛こそすべて」ではない

愛さえあれば、世界から争いがなくなるとか、人が幸福になれるとか、主張する人がいるが、大きなまちがいである。愛にも、いろいろなものがある。 『世界で一番美しい夜』という映画では、世界平和のために縄文人の性欲を研究する元過激派というのが出てきて…

もし俺がドラッカーを読んだら

ドラッカーというくだらぬものが流行しているので、一言申しておきたい。 あんなものは商人道徳である。 商人の仕事は、ゼニ儲けである。安く仕入れて、高く売ることである。そこにはなんら高尚な理想も哲学もない。 ゼニ儲けは、いやしいことである。世の中…