たった二人で世界は征服できる

 多数決はやばい、という話の続きなのだが、多数決がフェアなルールであるためには、有権者がなにものにも拘束されずに、各自で判断できることが必要である。
 しかし、どのような政党であろうと、多数の票を獲得するためには団結を呼びかけ、また有権者も自分の支持政党に勝たせるためには仲間を拘束して、投票をお願いするのであるから、有権者の独立性などは保たれない。みんな結局のところ、一人のボスの言いなりで投票してるのだから、これは独裁と同じである。
 鈴木健なめらかな社会とその敵』(勁草書房)には、次のような指摘がある。(「第6章 個人民主主義から分人民主主義へ」)

 たとえば、理論的には2票をもっていれば、どれほど大規模な国家の意思決定でもコントロールすることが可能である。まず、3人で構成される利益集団Aをつくり、そのうちの2票を固める。そのうえで党議拘束をかけて全員がある意見で投票するように決める。
 さらに別の2人で構成される別の利益団体Bを考える。利益団体AとBを束ねる利益団体Cをつくり、そこで投票を行うと、3票を束ねているので勝つことができる。
 そしてまた利益団体Cの党議拘束をかけて5票を固める。このようにして、2票⇒3票⇒5票⇒9票⇒17票⇒33票⇒65票⇒129票⇒257票⇒513票⇒1025票⇒2049票⇒4097票と倍々で増えていく。
 このプロセスを30回も繰り返すと10億票を超える力を得ることができる。(133頁)

 これ、田舎の議会くらいなら簡単に乗っ取ることができそうだ。