映画「カメラを止めるな!」であるが、冒頭のゾンビ映画がひどい出来だというのは、衆目の一致するところである。町山智浩はTBSラジオ『たまむすび』で、次のように語っている。
なんか廃工場で主人公たち4人ぐらいがゾンビに襲われるという形で始まるんですけども、まあ見始めたら「これはダメだな」って思ったんですよ。もうタイミングが悪いし、ゾンビの演技もひどいし。で、ワンカットでずっと撮っているから時々、間が空いちゃっているんですよ。
そのあと、この撮影の舞台裏が明かされるわけだが、そこでスタッフがいくら必死に努力していようが、できあがった作品であるゾンビ映画がこのありさまでは、どうにもなるまい。作品の良し悪しで評価されるのがプロである。その裏でどれだけ努力してようが、そんなことは関係ないし、良い作品を作るために努力するのはあたりまえである。
ぼくたちはトラブルにもめげずに一生懸命がんばりました、というのはアマチュアの言い訳である。学芸会である。あの程度のゾンビ映画しか撮れないスタッフが、裏でどれだけ奮闘してようが知ったことか。
三谷幸喜の『幕を降ろすな』と『ラヂオの時間』は、いずれも舞台裏で奮闘するスタッフの物語であるが、度重なるトラブルにもかかわらず、元の作品よりおもしろい作品を作り上げてしまう。それこそプロの仕事である。
「わかんないのか? あの男はヘタだから降ろされたんだ。見てられねえから降ろされたんだ。出ないに越したことはないんだ。芝居続けていくだけじゃだめなんだ。いいもの見せねえと意味ねえんだよ」(『幕を降ろすな』舞台監督の台詞)
『カメラを止めるな!』が三谷幸喜よりおもしろいと評している者たちは、いったい何を見ているのか。
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