山田真哉『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』という本が、あいかわらず売れているようです。
この本は、やさしい「会計の入門書」というのが本来の目的なので、「さおだけ屋」のことは、ひとつの例です。
まあ、この本を読んで、「さおだけ屋」をやろうと思う人は、いないでしょうが。
しかし、本当に「さおだけ屋」は潰れないのでしょうか?
そもそも、「さおだけ屋」という商売は、まだあるのでしょうか。おれなんか、もう何年も、見たことないですけど。
金魚売り、シジミ売り、アサガオ売り……。これらの商売だって、もう落語の中にしか、ないでしょ。
ようするに、儲からないから、潰れていくわけで。さおだけ屋だって、儲かる商売じゃありません。
『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』では、さおだけ屋の「利益の出し方」をいくつか説明していますが、あんなものでは商売になりません。
まず、商品単価を上げるやり方ですが。さおだけを買いに来た客に対して、主人がセールストークによって、高級品を勧め、それを買わせる。
しかし、さおだけに、1万も2万も払う客は、いないでしょう。
それに、さおだけ自体が売れないのだから、たとえ一月に数本売れたところで、ガソリン代にもなりません。
もっと悪質にやろうとすれば、サギになります。さおだけを買いに来た客に対して、他の商品も買わせたり、家の改築まで勧めたりする。これはたしかに、儲かるでしょうが、抱き合わせ商法や、悪質リフォームであり、こんな商売ができるのは、よほど良心が痛まない人でしょう。
そもそも。軽トラックに「さおだけ」を積んで、売るというのは、手間や経費を考えても、それだけで生計を立てるのは無理です。
それで。本業は金物屋で、その配達のついでに、軽トラックに「さおだけ」を積んで、売っている、という話も紹介されていましたが、これも、おかしい。
さおだけ自体が、めったに売れないのだから、そんなものより鍋でも包丁でもセールスした方が、よほど利益が出ます。
結論。
さおだけ屋は儲からない。