古川日出男『ベルカ、吠えないのか?』を読みました。
4頭の軍用犬が、現代史を駆け抜ける。犬の視点から描く、人間どもの蛮行。
いいですね。最近の小説はどれもスカスカの、わかりやすい文章ばかりで、うんざりしますが、古川氏のマジックリアリズム風の、癖のある悪文も、慣れればまた、よろし。
犬と飼い主が遭難する。その犬は、生き延びるために、死んだ飼い主(人間)の肉を喰らう。
やっぱりそうだよな。犬なんだもん。
人間の肉を喰らい、生きろ、吠えろ、ベルカ。
手塚治虫の『ジャングル大帝』のラストで、レオと、ヒゲおやじが雪山で遭難して、レオが自分を犠牲にして、ヒゲおやじがその肉と毛皮で生き延びる、という場面が、手塚のヒューマニズムだとかなんだとか、バカじゃねえの、と思っていたのだが、
『ブッダ』でも、自分から火に飛び込んで人間のエサになるウサギがいたっけ。
『ベルカ、吠えないのか?』を読んで、あれはやっぱり、ただの人間のエゴだと確信。
食物連鎖ってものがあるんだから、人間が、他の動物のエサになるのも、しょうがない。