栗原康『学生に賃金を』を読む。著者は執筆当時、35歳。早稲田の大学院を出て年収は80万、奨学金としての借金635万円を抱えていた。
こんな社会はおかしいということで、大学の学費をタダにして、奨学金は返済しなくてもいいことにしろ、と訴える。さらに大学の無償化のみならず、学生に賃金を与えよ、と主張する。こういう人を、私はわりと好きである。
この本で知ったのだが、もともと無利子であった奨学金が、「奨学」の精神を失い、「借金(ローン)」化していった背景には、著名な三名の文化人・学者の関与があった。堤清二、橋爪大三郎、大澤真幸である。
1999年、彼らは『選択・責任・連帯の教育改革』という報告書を取りまとめ、奨学金制度もふくめた抜本的な教育改革の提言をおこなった。(P131)
その内容をまとめたった。
・学生定員を廃止して、大学入試をなくすよ。
・大学入試をなくしたら、進学率が一気にあがって、学生が増えすぎて困るよね。
・授業料が現状のままなら、国の教育費負担がふくらんで困るよね。
・そんなら大学の教育費は、学生の負担にするよ。
・授業料を数倍に値上げすれば、国は大学教育に金を出さなくてすむよね。
・授業料は年間180万、生活費を120万とすると合計300万。四年間で1200万ね。
・これだけ値上げすれば、本当に学ぶ必要のある人だけが大学に来るようになるよね。
・学費はすべて、学生の本人負担ね。
・親が学費を払うことを禁止ね、もし払った場合には贈与税をかけるなどの罰則ね。
・どんな学生でも銀行から奨学金ローンを借りられるようにするから、家が貧しくても平気だよ。
・1200万を20年ローン、年利6%の固定金利で借りたら、年間の返済額は100万ぐらいだよ。
・これくらいなら住宅ローンより安いし、働き出してから余裕で返済できるよね。
・この自己負担の原則こそが、もっとも公平な仕組みだぜ(キリッ
この提言をうけて、小泉内閣が行政改革。
奨学金ローン地獄で、もがき苦しむ学生が続出。←イマココ
「ド素人のほうが極道より、やることがえげつないことが、ようわかったやろ」
(青木雄二『ナニワ金融道』8巻)
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