芸術家だもの

 NHKの「BSコンシェルジュ」という番組に、宮本信子が出演、伊丹十三について語る。司会は青木さやか。これがひどい。
青木「私、伊丹監督の映画、大好きなんですよ」
宮本「でもあなた、まだ子供だったでしょ?」
青木「小学生の時に、『お葬式』をテレビで見たんです」
宮本「……」
青木「それで次回の予告が『タンポポ』で、生卵を口移しにするシーンがあって、なんだろう、この映画は、って」
 青木さやかは、伊丹十三が映画監督となる前に、俳優だったことも知らなかった。
黒沢清の映画術』という本で、黒沢清はこう語っている。

明らかに伊丹さん自身、どんどんシニカルになっていきました。どこかに自分の映画を褒める人間はみんなバカだという軽蔑があり、どんなに褒められても、お金が儲かっても嬉しくない。虚ろな印象がどんどん強くなってゆきました。

 いがらしみきおの昔の4コマ漫画に、こういうのがあった。ピアニストのリサイタルが開かれる会場。その入口では、客が長蛇の列を作っている。ピアニストが楽屋の窓から、その客を見下ろしている。そしてつぶやく。「バカなやつらだ」
 これも芸術家の姿である。