人はなぜケツを出すのか

 大学のラグビー部員が、寺院でアルバイト中に下半身を露出して接客していたということで、その画像がネット上に流出して騒ぎになっている。その画像を見たが、下半身を露出というと猥褻であるが、あれはどちらかというとケツを出しているという写真であった。
 細かいようであるが、チンコを出すのとケツを出すのとでは、文化的にも社会的にも意味合いがちがってくる。ここは分けて考えなくてはならない。ラグビー部員なら人前でケツくらい出すだろう。
 というのは、前にテレ朝の「探偵ナイトスクープ」という番組を見ていたら、どこかのラグビー部員が先輩に命令されて、テレビカメラの前でいきなりトランクスを下げてケツを見せたことがあったからである。こういうことがべつに問題になることもなくテレビ放送されていたということは、少なくとも関西圏では、ケツを出すのはひとつの芸として認知されていると思ってよかろう。
 芸ということを書いたが、「オレたちひょうきん族」ほど、芸人がケツを出した番組もなかった。あれを見てわれわれは、芸人というのはケツを出す職業だと認識したのである。その放送作家であった景山民夫はたしか、芸とはケツを出すことである、とどこかに書いていたはずであるし、自身もバラエティ番組でケツを出したまま交番のおまわりさんに道を尋ねるということをやっていた。その姿を見た子供たちは、「あの人、ケツが出てる」と大笑いしていたそうである。
 ケツとはそういうものであり、良識派が眉をひそめるほどの害毒はなく、社会システム論によれば、他人のケツを見て笑うことで血行がよくなり新陳代謝が活発になるという学説もある。
 結論めいたことを書くのは本意ではないが、問題となったラグビー部員も、客にチンコを向けて接客したのがまずいのであって、ケツを向けてお守りを売っていたのであれば、なかにはよろこぶ参拝客もいたであろう。