これは原爆ではない

芸術家集団「Chim↑Pom」が、広島上空に飛行機で、「ピカッ」の文字を書き、被爆者団体らに抗議されて、展覧会を中止にした件で、
そのすぐあとに、現代美術作家ツァイ・グオチャンが、原爆ドーム付近で「黒い花火」を打ち上げた。


広島 Chim↑Pomの「ピカッ」はダメでもツァイ・グオチャンの「黒い花火」はOK


ツァイ・グオチャンは中国人で、朝日新聞主催の「ヒロシマ賞」の受賞者。
「中国の原爆は、きれいな原爆」
朝日新聞の戦争責任は、きれいな戦争責任」
というのは冗談かと思っていたら、本気でそう思っている人もいるんですね。
展覧会を中止にさせるなんてことは、芸術家を殺すに等しく、表現の自由を奪うものです。抗議した人々にその自覚があるのか、むしろやつらを殺してやったと手柄のように思っているのであれば、なんとも寒々といたします。抗議するなら、だれにも平等に抗議してもらわないと、広島で芸術活動を行う人は、被爆者団体らの許可をいただいてからでないと、何もできないことになりますなあ。もう、そうなっているのかもしれませんが。芸術のよしあしは、広島市民がお決めになられると。まあ、こういう政治性を露見させたという点で、「ピカッ」と「黒い花火」は、たしかに現代芸術でありました。


Chim↑Pom:我が道をゆく6人のアートソルジャー


この動画、ぜんぜん視聴されてないね。みんな関心ないのか。


現代芸術というものは、不愉快なものであります。

デュシャンは便器を『泉』と題して美術展に持ち込み、
ビタミン・アートという前衛芸術集団は、展覧会場で観客に本物のウンコを投げつけたそうです。
ダミアン・ハーストは、牛や羊の死体を展示しています。

ウィーン・アクショニズムを代表するヘルマン・ニッチュは、子羊や豚、雄牛を殺し、内臓を摘出しておびただしい血をぶちまけるというアクションで知られ、ポール・マッカーシーにはケチャップやマヨネーズを体になすりつけるというパフォーマンスがあります。

ヨーゼフ・ボイスに、『死んだウサギに絵を説明する方法』と題するパフォーマンスがありまして、彼は自分の顔にハチミツを塗って、金箔を貼り付けて、抱きかかえた野ウサギの死体に美術作品の解説をしながら画廊の中を歩き続けるんです。


現代芸術をわかりたければ、
パフォーマンス・アートと、コンセプチュアル・アートについて学ぶとよろしい。
絵画や彫刻をながめて、「ほほう、これは美しいですなあ」などとやっているようでは、いつまでたっても現代芸術は理解できません。

三浦俊彦の『これは餡パンではない』という小説は、じつにすぐれたコンセプチュル・アート作品でもあります。
これを読めば、現代芸術がどういうものか、手っ取り早くわかります。

アメリカ精神医学会による『DSM』という書物には、精神病のほとんどの症例が、載っています。

それにも似て、『これは餡パンではない』には、現代芸術のほとんどのパターンが提示されています。
どれほど新奇に見えても、人が考えることなど、たいていどれかのパターンに当てはまるものです。
以下に、簡単にまとめてみました。


行為記録型

  • 一日ひとつ数字を書いていく
  • ボロフスキーのカウンティングアート。
  • 河原温のデイトペインティング。

鑑賞者共犯型

  • 鑑賞者に絵を描かせる。

  「あなたひとりで自由に絵を完成させてください」

  • ロバート・ワッツ(行為芸術)

  『舞台に2インチのリボンを張り、そして切れ』

  • ベン・ボーチェ

  そのへんの樹や椅子、海岸や家に片っ端から「署名」して、
  自分の作品としてしまう。

虚無型

  • キャンバスの木枠だけを展示。「壁を見ろ」
  • 何もない場所に、題名と作者名の札だけ。題は『無』
  • 河原温。出品拒否、その拒否行為こそが作品。
  • ジョン・ケージ。演奏者が演奏行為を行わない『4分33秒

偶然型

  • テレビを展示。そのとき偶然映っている番組が作品。
  • ジョン・ケージ『ラジオチューニング』
  • 窓枠に額縁を取り付け、窓外の風景が作品。
  • 絵を吊り下げ、揺れている影を見る。その影が作品。

哲学型・ナンセンス型 
  白いキャンバスに文字だけ。
 「これは芸術です」「これは芸術ではない」「これを見るな」
 「これは経験です」「これは世界です」…

鑑賞差し戻し型
 鑑賞者に指示をする。
 「この絵の中央から半径六センチの区域は、この作品に含まれておりません。その部分は除いてご鑑賞ください」

鑑賞妨害型 
 作者が絵の前に立って、絵を見せない。その妨害行為も作品の一部。
 鑑賞者が絵を見るのをあきらめた場合、作品であることを気づかせないまま済ますという「ハプニング芸術」となる。
 また、鑑賞者が妨害を阻止して絵を見ようとした場合、その鑑賞者の行動もまたパフォーミングアートの一部とされ、「パフォーマンス誘発型」の芸術となる。

鑑賞強要型、鑑賞指導型
 作者自身が、経歴や、自作について詳細に語り、分析的な解説をする。
 その上で、「この情報は作品の解釈・評価には全く関係ありません。どうかお忘れになって、純粋に作品をご賞味下さい」と指示する。

自己破壊型

  • 絵を描き上げて写真を撮り、絵を燃やす。最終的な作品はその写真。
  • 展示した絵を、少しずつ腐蝕させていく。
  • オノ・ヨーコ。リンゴを展示してその腐敗過程を見せる。

破壊パフォーマンス型

破壊要求型
鑑賞者に破壊させる
他者妨害芸術、通行禁止型芸術
他人の作品を無断で鑑賞者の目からさえぎる。

「妨害型」のバリエーション

  • 作品の前に障害物を置きさえぎる(間接妨害方式)
  • 周りの作品を狙って黒ペンキ等を吹きつける(直接妨害型)
妨害克服鑑賞型
風景画の前にいくつものカミソリをぶらさげる。

逆撫で型 

  • 犬猫など生きた動物をはりつけ。着々と飢え衰えていくのを鑑賞。
  • 島本昭三『アーチスト磔刑
  • ジョージ・マチューナス、動物の糞を瓶詰めにして展示。
  • マンゾーニ、自分の大便を缶詰。

鑑賞者対象化型、鑑賞者同化型

  • 絵の一部をマジックミラーにして、その絵を鑑賞している観客の顔を、壁の裏側に来た観客が図らずも鑑賞する。
  • 鑑賞する人が、鑑賞の対象となる
  • インスタレーション
  • 展覧環境の空気全体が美術品。舞台的・人間学的芸術という考え方。
  • 「電話をおかけ下さい。あなたの会話姿が芸術です」
  • グループネオダダ『敗戦記念晩餐会』

 招待した観客たちを前に、ひたすら主催の芸術家側がご馳走を食べてみせる。

オカルト型
のろいをかけて忠誠を誓わせる
破滅型
汚物、狂気、醜怪な絵、雑音などのノイズ。自殺パフォーマンス。

心中型

  • 芸術と心中
  • テロ。多くの人を巻き添えにする。


これは餡パンではない

これは餡パンではない