テロリストの叙情

元「頭脳警察」のPANTAが、重信房子の詩に曲をつけ、アルバムを出した。

FOOTSTOMP徒然ダイアリー

連合赤軍永田洋子は、獄中で少女漫画風のイラストを描いていて、大塚英志はそれを「乙女チック」とフェミニズムの観点で、論じていたが。

日本赤軍重信房子の詩は、どうであろうか。『ライラのバラード』を読んだ限りでは、叙情的ですね。

テロの犠牲者からすると、あの惨劇をこういう叙情で歌われたら、たまらねえよ、という気になるであろうが、永田や重信に限らず、テロリストというものは、叙情に酔うところがある。

石川啄木や北村透谷にも、そうした面はあり、柄谷行人は、白樺派の思想はアナーキズムであると指摘している。(『批評空間』2002年4月)

春の夜の電柱に
身を寄せて思ふ
人を殺した人のまごころ

夢野久作『猟奇歌』

催涙ガス避けんと秘かに持ち来たるレモンが胸で不意に匂えり

ガス弾の匂い残れる黒髪を洗い梳かして君に逢いにゆく

蒼ざめし馬にまたがるわれありて夢のテロリスト国会を翔る

道浦母都子『無縁の抒情』

とはいえ、おれがテロリストを嫌いなのは、(好きな人はあまりいないだろうが)彼らは、民衆が幸福になれる社会を望みながら、民衆を殺す、そのことが許せないからであります。

そういう方法で革命が成就したところで、その革命政権は、民衆の支持を得られないだろう。

であるが、しかし。民衆の敵である為政者を、暗殺した者は、
わりに民衆に愛されるところがある。

幕末の志士、新撰組二・二六事件青年将校など。

吉田松陰というテロリストの親分が、今なお人気が高いのも、そういう理由であろう。

重信房子の父は、血盟団のメンバーであった。

”一人一殺”の血盟団事件では、検挙された青年たちのために、全国から三十万通もの減刑嘆願書が寄せられたという。(鈴木正『暗殺秘録』原書房

彼らの公判に駆けつけた73歳の老婆は、こんな句を詠んだ。

有難や 冥土の土産に 義士の劇