誰がミスチルか

 ヤフーニュースで見たが、Mr.Childrenが、1月3日と4日に予定されていた福岡ドーム公演を延期するそうだ。理由は、ドラマーの鈴木がウィルス性胃腸炎になったためだという。
 ファンはたまらないであろう。延期になるとはいえ、生涯にこの日しか見られないというファンだっているはずだ。それにしてもたかがドラマーが体調不良になっただけのことで公演をやめる必要などあるのだろうか。あのミスチルである。おれはミスチルの音楽を聞いたこともないが、そんなおれですらボーカルが桜井だというのは知っている。
 桜井だけで福岡ドームは満員にできるだろうが、ドラマーの鈴木を見たくて集まるのはせいぜいその家族と友人である。ミスチルのファンと言ったって、だれもドラマーの名前なんか知りもしないのである。
 ミスチルのドラマーなんか、誰でもいいじゃねえか。たとえギターもベースもコーラスも、ダンサーも、桜井をのぞくスタッフ全員が胃腸炎で倒れたとしても、桜井がひとりでステージに立ち、弾き語りでも握手会でもやれば、それできっとファンは満足するはずだ。
 しかし、公演は中止になった。ファンの期待を裏切り、損害を出してまで公演中止に踏み切るとは、よっぽどのことである。もしかしたら、ドラマーの鈴木という人は、ミスチルには欠かせない重要人物なのではないのか。
『百年目』という落語に、こういう挿話がある。
 昔、天竺に桜井という立派な木があり、その横に鈴木という汚い木が茂っていた。ある人が、目ざわりだというので、鈴木を引っこ抜いてしまったら、桜井まで枯れてしまった。調べてみると、桜井は鈴木を肥やしにして育ち、鈴木は桜井の露で育っていたことがわかった。桜井が育つと、鈴木も育つ。まわりからはムダに見えるようなことでも、それにだってちゃんとした役割があるという教えである。