魚と寝る女

キム・ギドク監督『魚と寝る女』を見ました。
この監督の映画は、初めて見たのですが、なんともいえない陰惨なムードで、ひたすら暗く重たく、おれは好きです。いい映画でした。

湖の上に浮かんだ小屋で、釣り客相手に売春をしている女がいて、そこに自殺志願の男が訪れる。この女が、無口というか喋れないのか、まったくセリフがないのですが、男を好きになり、しだいに過剰な行動に走っていく。
この女優が、すごく薄幸そうな、本当に底辺でギリギリに生きている女、という雰囲気ですばらしいです。

病んでいる感じとか、無意識の暴力とか、人間の負の部分を、じっとりと描いてまして。

魚を釣るのも、女と寝るのも、物を食うのも、人を殺すのも、カエルや小鳥を殺すのも、すべてが同じトーンで描かれており、どうにも、やりきれない感情になります。

見終わったあとも、ずっと喉の奥に、釣り針が突き刺さっているような、そういう気持ちにさせる映画。