差別は当然なんだよ

『手紙』という映画を見てまいりました。

東野圭吾の原作なので少しは、まともな映画かと思っていたら、これがまた、ひどい映画でした。

強盗殺人犯の兄を持つ、弟の話です。

兄のせいで、弟もまた、世間から嫌がらせを受けて、だけどけなげに、生きていって、お笑い芸人になったりもしますが、この弟役の山田孝之氏は、どうにも表情に乏しく、陰気で、どうにも、お笑い芸人という感じではありません。
沢尻エリカさんも、『シュガー&スパイス 風味絶佳』では、ガソリンスタンドのアルバイトという似合わない役でしたが、今回は、それにもまして、工場の社員食堂の従業員という、ありえない役で、もうそろそろ仕事を選んでもよろしいのでは。

吹石一恵が、大企業の令嬢役で出演しているわけですが、どうみても、これは逆だろうと。エリカ様がご令嬢で、吹石が社員食堂のパートであれば、少しはこの映画も、ましになったかも。
そんでまあ、ケーズデンキというのが、協賛しているからなのか、映画に実名で出てきまして、芸人をやめた山田孝之が、「ケーズデンキ秋葉原店」で働き始めます。

ところが、そこに泥棒が入って、山田氏は「埼玉の倉庫」に、とばされます。

その理由が、「今度の事件で、社員の身上捜査をしたら、きみには、服役中の兄がいることがわかった」から。
こんなことを、上司が、はっきり言うわけです。いいのか、ケーズデンキ

さらに、埼玉の倉庫で働く山田氏のもとに、ケーズデンキの「会長」が現れます。この会長のセリフがすごい。

人事異動が、不当だと思っているかね?
配置転換は、人事の処置としては間違ってなかった。当然なことをしたまでだ。
きみは差別されたと思っているかね?
しかしね、差別は当然なんだよ。
どんな人間だって、犯罪からは、遠く身をおきたいと思っている。自己防衛本能とでもいうかね。
きみは、ここからはじめるんだよ。

なんなんですかね。このセリフは。

社員の身上捜査をして、不当な理由で左遷しておきながら、この会長は、説教までするわけです。

シナリオの段階で、こういうセリフはおかしいと指摘するスタッフが、いないのでしょうか。

こういうので、感動させられると考えているのなら、愚かであるし、泣いている観客は、さらに愚かだし、安易に感情を揺さぶられる前にもっと頭を使って、考えることはいっぱいありますよ。

小田和正の「言葉にできない」という歌が、使われているんだけど、こんなクソ映画を2時間も見るより、YouTubeにUPされている「言葉にできない」のほうが、数倍も、たのしい。