ペンギン残酷物語

皇帝ペンギン』という映画のCMが、よく流れてますね。
ペンギンは、かわいいです。
塚本邦雄の短歌
「日本脱出したし、皇帝ペンギン皇帝ペンギン飼育係りも」
それで、ペンギンにまつわる話を。
昭和33年。
南極昭和基地の越冬隊は、悪天候のため、15匹のカラフト犬を、置き去りにして、帰国する。
しかしそのうちの2匹、タロとジロは、極寒の地で奇跡的に生き延びて、越冬隊員と、感動的な再会を果たします。
これは『南極物語』という映画にもなり、大ヒットしました。
しかし。
エサもない南極で、犬はどうやって生き延びたのか。
タロと、ジロは、ペンギンを食ったんです。
作家の星新一さんは、「ペンギンの身にもなってみろ」と憤慨し、『探検隊』というショート・ショートを書きました。(『ようこそ地球さん』所収・新潮文庫
「あとがき」では、こう書いています。

犬を当然のごとくペンギンより優位においているが、
私のようにペンギンに同情したくなる気分だって、
あっていいのではないだろうか。

もうひとつ。
荒俣宏さんの労作『世界大博物図鑑』
その「ペンギン」の項には、こんな話が載っています。
歴史上、よく知られている、マゼランの世界周航。

マゼランの艦隊は、パタゴニア沿岸で、〈見なれぬガン〉の大群に出会った。
これがヨーロッパ人とペンギンとの初邂逅だと考えられている。
(中略)
かれらはその後、南極に向かっているとき、二つの島でまたも大量のペンギンに遭遇し、1時間のあいだに5隻もの船にこの鳥を満載した。
むろん肉を食用とするためである。

ペンギンの身にもなってみろ。

ようこそ地球さん (新潮文庫)

ようこそ地球さん (新潮文庫)