ロッキー

ギャオで映画『ロッキー』

バカにしてたけど、ちゃんと見ると、いい映画でした。おれが年取ったせいだろうか。

町山智浩『映画の見方がわかる本』によれば、映画のモデルとなったのは、モハメド・アリと戦ったチャック・ウェプナーという無名のボクサー。

1975年。アリはジョージ・フォアマンをKOで破り、へヴィ級世界王者。対するウェプナーは、36歳。ボクシングでは食えないから、酒のセールスマンをしていた。

勝敗は誰の目にも明らか。三流ボクサー。ファイトマネーの十万ドルにつられた人間サンドバッグ。

誰もがそう思った。

しかし、ウェプナーは心に決めていた。

「これはオレの人生にたった一度の晴れ舞台だ。決して倒れないぞ。たとえ殺されても」

その決意どおり、ウェプナーは、打たれても打たれても、顔が血みどろとなっても、倒れなかった。9ラウンドには、逆にアリからダウンを奪う。
そして最終の15ラウンド。残りわずか十九秒で、ウェプナーはダウン。カウント9で立ち上がるものの、レフリーストップ。結果は、アリのTKO勝ち。

しかし、すべての観客は、敗者であるウェプナーに、総立ちでいつまでも拍手を送り続けた。

この試合を見て、一人の無名の俳優が猛烈に感動する。彼の名はシルヴェスター・スタローン
スタローンは三日三晩、一睡もせずに一気に『ロッキー』のシナリオを書き上げる。
「ロッキーは僕自身だ」