ツンボ、ビツコ、うんこ

 Eテレセレクションで、舞台「浮標」(長塚圭史演出)をやっていた。冒頭に、「放送上、不適切な表現を部分的に編集しています」と出たので、三好十郎の原作戯曲を手元に置きながら見る。 
 近頃、BSのプレミアムステージなんかじゃ「乞食」というセリフもそのまま放送しているが、地上波はまだまだがんばっている。あからさまにピー音で消すのではなく、編集がうまくて、ぱっと見、どこをカットしたのかわからない。GHQの検閲と同じやり方だ。
 原作で、カットされたセリフをさがす。
「私はツンボーではおまへんで」
「あてはツンボーどすよつてに、なんにも聞こえへんのどつせ」
「現に君があれ程讃美してゐるツンボの小母さんにしたつて、結局人間だ」
「又あのツンボのおつかあが出て来て」
「お前みたよなツンボーの赤ん坊なんど知らん言ふたらあきまへんえ!」
「べつぴんだぞ。惜しいことに、少しビツコでね」
 これはひどい
 さて余談だが、昔ツービートの漫才で、ごはんを口の中であんまり噛みすぎるとうんこになる、と言っていたのを覚えている。それの元ネタというわけじゃあるまいが、この芝居にもそんなセリフがあった。バカなことを考えるものである。(「浮標」の初出は1940年)

美緒 だつてさ、あんまり噛んでると、食べ物みんな、口ん中でうんこになつてしまやしないかな。

三好十郎 II 浮標(ぶい) (ハヤカワ演劇文庫)

三好十郎 II 浮標(ぶい) (ハヤカワ演劇文庫)