おっとう

 押尾学の裁判で、亡くなった女性の母親が法廷に立った。
 その証言の中で、(定年を迎える父親のことで)「娘に『おっとうが最後と決めた日に弁当を作って送り出したい。必ずその日を教えて』と頼まれていました」というのがあった。
 この「おっとう」という言葉は、悲しい。父親のことを「パパ」でもなく、「お父さん」でもなく、「おっとう」と呼んでいた娘。被害女性の、はかない人生がこの一言によって浮かび上がる。