村上春樹に直木賞を

芥川賞直木賞というのは、紅白歌合戦みたいなもんだ。
紅白歌合戦というのは、たかがNHKが放送する歌番組に過ぎないのに、なんで毎年ほかの民放各局までが大騒ぎするのであろうか。
いまどき、「紅白に選ばれたからすごい歌手だ」などと思う人も少なかろう。紅白を見て年越しするのが日本人だ、という人もいるが、テレビが各家庭に普及したのはつい最近のことじゃねえか。
それで、芥川賞直木賞というのも、文芸春秋が決めているようなもので、なんでほかの出版社までが大騒ぎするのであろうか。いまどき、「芥川賞受賞作だからすごい小説だ」などと思う人も少なかろう。

太宰治吉村昭中島敦武田泰淳島尾敏雄金井美恵子島田雅彦村上春樹よしもとばなな……、これみんな芥川賞・落選組である。
デビューはパッとしなかったけど途中からがんばって人気作家になったとかいうならまだしも、彼らの場合、最初からすごかったではないか。なかにはデビュー作が一番いいという人もいるわけで、これはあきらかに選考委員にみる目がなかったわけである。
そういえば芥川賞選考委員の黒井千次は、芥川賞を取っていないし、直木賞選考委員の北方謙三は、直木賞を取っていない。その心中やいかに。いっそのこと、「今回の受賞者は、おれ」とでも言えばどうか。
それで、もともとは無名の新人作家のための賞であったはずが、芥川賞はまだしも、直木賞はなんだか迷走していて、すでに有名なベテラン作家の北村薫が受賞した。
北村薫がいいんだったら、村上春樹だっていいんじゃないか。いっそのこと、芥川賞・落選組のすべてに直木賞を授与して、彼らの名誉を回復してはどうか。
ガリレオは地動説を唱えて裁判で有罪となったが、それから350年後に、ローマ教皇はようやく裁判の誤りを認め、ガリレオの名誉は回復された。(すごい事例を出してきたな・笑)

なんてことを書いてはみたが、『文学賞メッタ斬り!』の人たちみたいに、真剣に怒ったりするのもなんだかねえ。
くだらない作家が名誉を授けられ、すぐれた作家がまったく認められないという世の不条理もまた、きわめて文学的なことではあるまいか。