愛すべきか、あわれむべきか

栗本慎一郎の『パンツをはいたサル』(光文社・カッパ版)の表紙には、パンツをはいたチンパンジーの写真が使われていた。

書店でその表紙を見た一人の主婦が、
「まあ、パンツをはいたサルだって、おもしろいわねえ」と言った。

この主婦は、栗本のその本が、難解な現代思想を解説した本だとは知らず、ただタイトルと表紙を見ただけで、なんだか面白そう、と思ったのだろう。

しかし、中身をちゃんと読み、バタイユだのポランニーについて、訳知りに語りたがる者より、この主婦の方が好きだ、ということを早川義夫がその昔書いていた。

現代思想などと縁なく生きる、この主婦の無知と無邪気さというものは、たしかにどこか愛すべきものがある。
最近のテレビで、バカタレントが愛されるのも、こうした理由によるものだろう。

しかし、である。

テレビ番組がバナナダイエットを取り上げ、森公美子が7キロやせたと知るや、スーパーに駆け込んでバナナが品切れになるほど買い込んだり、『B型自分の説明書』などというバカげた本を買う者が100万人以上もいるとなると、
ぞっとします。