浅羽通明『『君たちはどう生きるか』集中講義』を読む。
「憲法とは悪質なる詐欺であった」という指摘がすごい。
憲法は人権や表現の自由などの様々な権利を国民へ保障してくれているが、そんなおいしい話はない。その権利を行使するには裁判費用などの金がかかる。そういう本音を隠して、おいしい話だけをするのは、カルトやマルチ商法と同じ詐欺である。
日本国憲法がくださったありがたい人権保障に与るのだって同じでしょう。
喩えていうならば、こうです。
幼い子どもに、豪華な料理のメニューとその写真を見せて、高級レストランへゆけば、こんなおいしいものがどれでも好きなだけ食べられるんだ。レストランは、誰も注文してはいけないなんていえない。
ホテルというところに泊まれば、掃除もクリーニングも食事も、すべていたれりつくせりのサービスをしてくれるよ。ホテルは、おまえはだめなんて拒めない。
東京ディズニーランドに行くと、こんな楽しいものばっかりが溢れているよ。
どれも誰もがいつでも毎日でも行っていいんだよ。以下同文。
なんて教えこむようなものです。
そして、その気になって、わーいいなあ、行きたい行きたい、すぐ連れて行ってとねだられて初めて、でもすごくお金がかかるんだ。はいれるのはお金持ちだけなんだ。父さんいま貧乏だから、また今度なと種を明かす。
これが、公教育で行なわれている。詐欺なのです。
(217-218頁)
建て前と本音、理想と現実、を見据えて、コストを払い、リスクを負う覚悟をせよ、ということだ。
どんな夢でもかなうよ、ただし、才能があって努力して運がよければね、失敗すれば地獄だけど、ということだ。
これは浅羽通明が他の本でも繰り返し述べてきたことである。ふと、著者自身はどうなのか、と思うのである。司法試験合格という強力な武器を持ちながら、なぜこれほど明晰な頭脳を法曹界で生かそうとはしなかったのだろうか。もしくは、村上龍『愛と幻想のファシズム』の千屋裕之のように、政治結社の幹部となって日本を牛耳ることもできたと思うのである。
『君たちはどう生きるか』集中講義 こう読めば100倍おもしろい (幻冬舎新書)
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