四方田犬彦はまちがいを指摘されても訂正しないらしいので、校閲も仕事にならないのか。
筑摩書房が「図版資料満載の超弩級評論集」と銘打って刊行した『1968』シリーズであるが、大部分は当時の資料を再録しただけで、肝心の評論は少なく、しかも誤記が多い。
『1968 漫画』は、岡田史子を『ガロ』出身とするなどの誤記が、amazonレビューで指摘されている。
『1968 文化』を読んだが、これにも誤記がある。
四方田犬彦が作成した巻末「年表 1968~1972」より。
1968年 2月1日 南ベトナム軍将校解放戦線兵士を路上で射殺する直前の写真が世界中に後悔(○公開)され、のちにさまざまなアートの素材となる。
1970年 11月20日 吉本隆明が『情況』で、「ふだん政治的上段(○冗談)や芸人的冗談を売り物にしているような男が、<まじめ>くさった顔をしてなんかいうときは、嘘をついているにきまっているのだ」と書き、前田武彦をはじめとするTVの芸人たちを次々と批判する。
まあこれらは誤植のたぐいだが、ひどいのが同書収録の西堂行人「演劇 アングラ革命とその時代」(110頁)である。
かつてサブカルチャーを代表する作品として、『ライチ・光クラブ』があった。原作は古屋兎丸の漫画(ただし『ライチ☆光クラブ』)、これを舞台化したのが、東京グランギニョルを率いていた飴屋法水だ。1985年のことである。この作品は2012年、江本純子(毛皮族)によって再演されたが、異端を好む若者たちに絶大な人気を誇った(映画やテレビ・アニメ化され、2・5次元演劇でも舞台化されたが、ここでは触れない)。
おいおい、だいじょうぶか、この演劇評論家は。
東京グランギニョルの『ライチ・光クラブ』は、古屋兎丸の漫画が原作ではなく、逆である。
1985年には古屋兎丸はまだ高校生であり、公演を見てのちにプロのマンガ家になった古屋兎丸が、その舞台を元に漫画化したのである。さらに、江本純子による舞台は東京グランギニョル版の再演ではなく、古屋兎丸の漫画の舞台化である。
そもそも、『ライチ・光クラブ』を「サブカルチャーを代表する作品」だの、「異端を好む若者たちに絶大な人気を誇った」などと認識している点で、まちがっている。
koritsumuen.hatenablog.com
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- 作者: 四方田犬彦
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
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