大瀧詠一「分母分子論」のでたらめ

 大瀧詠一に「分母分子論」というのがある。
 明治以来の日本の音楽はすべて洋楽(世界史)からの輸入だから、分母は「世界史」であり、そこに分子として「日本史」が乗っかっているのが基本構造だという。
 これが戦後になると、ポピュラー音楽からの影響が顕著となり、英米のロックやポップスが「分母」で、その上に日本語の歌詞が「分子」として乗っかる。こうして作られた楽曲を大瀧詠一は、「世界史分の日本史」だと解説している。
 しかし、これは分数というものをまったく誤解しており、メタファーとしても意味をなさない。

 分数とは、整数aを0でない整数bで割った結果を、a/bで表したものである(『大辞林』)。
 4分の1とは、1つのものを、「4つに分けた」ときの「1つ分」という意味である。4分の2とは、2つのものを、4つに分けたものである。または、1つのものを、「4つに分けた」ときの「2つ分」という意味である。
 分母とは割る数であり、分子とは割られる数である。
 分母の上に分子が、ただ乗っかっているわけではない。分母と分子の影響関係を示したものでもない。分母分子が、地盤や歴史を示すものでもない。まして分母分子を、「世界史分の日本史」などと解説するのは笑止である。
 仮にビートルズの影響を分母4とし、日本語の歌詞を分子2とする楽曲があったとして、しかしこれを分数とするなら、2を4で割る意味しかない。
 これほどの博識な音楽家にして、小学校の算数さえ理解してなかったのである。

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