逆転人生は引き分け人生

NHKの『逆転人生』というのは、なんじゃこりゃ、という番組だった。
 居酒屋チェーン店を経営していた父が死去、その息子が父の残した借金40億円を背負わされることになったという実話である。しかし番組冒頭で、弁護士が登場して、息子は相続放棄すればこんな借金を背負わなくてすんだし、連帯保証人の母親も自己破産すれば借金はチャラになった、と身もふたもないことを言ってしまうのである。
 この息子はそれを知らずに、がむしゃらに働いて16年で40億円を完済するのであるが、この借金はべつに返さなくてもいい借金だったのである。16年で40億円もの利益を出したわけであるから、この息子は経営者としては一流である。しかし借金があったせいで、マイナスがゼロになっただけである。逆転されたけどなんとか引き分けに持ち込んだ人生である。
 ようするに銀行にだまされたのである。バブルの頃に銀行が無茶な貸付をやり、その父親が死んで、これは不良債権になるぞとあせった銀行員が、息子をだまして返済させたのだ。いちばん得したのは銀行である。あこぎな金貸しである。過剰貸付の責任を免れた銀行員は、今頃ほくそ笑んでいよう。この銀行員こそ、逆転人生である。
 人はみな、返さなくてもいい借金を返すために、はたらくのだ。
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