『たまたま――日常に潜む「偶然」を科学する』レナード・ムロディナウ著/田中三彦訳(ダイヤモンド社)を読む。
フランシス・ゴールトンが発見した「平均回帰」という法則がおもしろかった。
背の高い父親から生まれた息子は、たいていその父より身長が低くなる。なぜなら、父よりも息子の方が背が高くなると仮定すると、その孫はさらに高くならなければならず、世代を経るうちに人類の平均身長はどんどん高くなっていくはずである。しかしそうはならない。それは、背の高い親から生まれた子どもの背は低くなり、逆に背の低い親から生まれた子どもの背は高くなるという現象によって、人類の身長の平均値が一定に保たれるからである。これを「平均回帰」というのだが、ゴールトンは、こうした現象は知性や芸術的才能や運動能力といったものにも当てはまると考えた。
ピカソやタイガー・ウッズは、その子どもたちが自分に匹敵する偉業を打ち立てることを期待すべきではない。一方、馬鹿で無能な親のもとからとんでもない天才が生まれることもある。
そういや、東京芸大名誉教授の息子はJR放火魔だったし、ヤクザの娘がオリンピック選手になった。ダルビッシュ兄弟もまた「平均回帰」か。ゴールトンによれば、ある分野で例外的な才能を発揮して傑出するのは、100万人のうち約250人だという(P238)。
たとえクズみたいな親から生まれても人生をあきらめてはいけない。しかし、親が立派ならもう自分の人生はあきらめたほうがいい。
ゴールトンはこうしたことを研究して「優生学」という学問を創始したのだが、これはナチスに影響を与えたということもあって、現在では評判が悪い。それにしても、おもしろい考え方である。
- 作者: レナード・ムロディナウ,田中三彦
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2009/09/17
- メディア: 単行本
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