なにが「求めない」じゃ、ぼけ

 NHKのドキュメンタリーには時々とんでもないものが混じっているのだが、ETV特集『ひとりだ でも淋しくはない〜詩人・加島祥造 90歳〜』というのもひどかった。
 信州・伊那谷で暮らしているじじいの生活を追ったものだが、世俗を断って自給自足で仙人みたいに暮らしているのかと思ったら、とんでもない、若い女中を何人も雇って、その女どもが日替わりでじじいの身の回りの世話をしているのである。自分のひげの手入れさえ若い女中にやらせているのである。ぜいたくなものである。山奥のボロボロの山小屋みたいなところで孤独に暮らしているのかと思ったら、とんでもない、立派な一軒家で、元大学教授で詩集が何十万部も売れて生活費には不自由してないのである。
 その詩集というのも、相田みつをもどきで「求めない」とか「受けいれる」とかいうバカでも書けそうなやつで、片岡鶴太郎のような水墨画まがいのへたくそな絵まで描いており、個展をやれば、それにまた女どもがつめかけているのである。それでこのじじい、山奥でじっとしているのかと思ったら、講演会はやるし、バーに行くし、プールで泳ぐし、テレビには出るし、おれより行動的なのである。それでこのじじいのところに息子を自殺させたあの姜尚中がたずねていくのだが、印税で何億も儲けているくせに、テレビカメラが回っている前で、「お昼ごはんを食べたいので、このへんに立ち食いソバ屋はありませんかね」などと庶民的な一面をアピールする小芝居までやらかして、いやあ、正月早々気分の悪くなる番組を見た。