後生畏るべし

『十五歳』という詩集を読んだ。著者は1970年代始めに中学・高校生の青春を送った。そんな激動の時代に生きた一人の若者の、魂の叫びともいうべき詩集である。

『若者の詩』
若者は口ずさむ平和の歌を……
デモ 全学連
捕まっても平気だ
おれたちには明日があるのだ
明日に向って口ずさむ歌が悪いのか
若者は政治を見つめる(P10)

『暇人現代論』
戦争……平和
今の世は戦争を取る
殺し合い、憎しみ合う人間
日本もそういうケースにはめ込まれかけている
立ち上がるんだ日本
ぼくは叫ぶ
なぜこんな事があるのか……(P11)

 政治の季節。それを生きる若者の真っ直ぐな告白がここにある。そうかと思えば、純粋な恋に悩むこんな詩もある。

『きみがジュリエットなら 僕はロミオ』
僕がはじめて君に くちづけしたのは
あれは まだ肌寒かった秋の夕暮れ
君は 呟いていたっけ
あなたが好きよ と
僕は でも小きざみに震えていた
君を見たっけ
君がジュリエットなら
僕はロミオ
若い二人が
愛の為に生き抜き
愛の為に死ぬ
そんな感じの君と僕
僕らは 愛の伝説に生きている(P197)

 青春はどうしてこんなに、甘くせつないのだろうか。それにしてもわずか十五歳にしてこれほどの叙情を謳いあげる著者はどうだ。やはり天才は天才を知るのか、次のような短歌も詠まれている。

啄木の 詩集めくりし そのあまり
孤独な世界 歩み止めたし(P21)

 この詩集には、感受性の強い若者が傷つき悩み叫ぶそのありのままの青春が痛いほどに刻み込まれている。繊細な魂が生んだ奇跡の書である。著者は数冊の大学ノートに膨大な詩を書き残したが、汚れた世の中に染まることができないままこの二年後、わずか十七年の短すぎる生涯をみずから閉じた……、鉄道に身を投げて……、
 というのはウソです。
http://www.youtube.com/watch?v=nRFtX8naCZU
http://youtu.be/4P5dtlePo60

十五歳

十五歳