現代音楽なら手をたたこう

熊さん「ちょいとお尋ねしますがね、現代音楽ってのは、なんですか?」
ご隠居「なんだね、やぶからぼうに」
熊さん「うちのカカアが、言うんでさあ。おまえさん、Jポップばかり聴いてないで、たまには現代音楽でも聴いたらどう?って」
ご隠居「インテリの嫁なんかもらうからだ」
熊さん「そう言わないで、お願いしますよ。あっしに現代音楽を、教えてください」
ご隠居「しょうがないな。まずはこれを聴いてごらん」

熊さん「なんですか、こりゃ。音楽ってのは、ピアノとかバイオリンとか、楽器を演奏するものでしょ。こいつは手をパンパン叩いてるだけじゃねえですか」
ご隠居「クラッピング・ミュージックという。これを作ったスティーヴ・ライヒは、現代音楽の巨匠だ」
熊さん「な、な、なんですかい? こんなもんで巨匠になれるんですかい」
ご隠居「何もわかってないな。いいかい、このリズムをよくお聴き。最初は、二人の奏者が同じリズムを刻んでいる。”タタタンタタンタンタタン”。3-2-1-2だ。8分音符で12拍のリズム・パターンの繰り返しだ。ところがしだいに、一人の奏者のリズムが1拍ずつズレていく。そのことによって、複雑なリズムが生まれるのだ。しかし13回目には拍のズレが一巡して、もとのリズムに戻る」
熊さん「ポカーン」
ご隠居「言葉で説明すると、ややこしいが、この映像ならわかるだろう」

熊さん「なるほど、こういう仕組みですかい。あっしにもできそうだ」
ご隠居「そう簡単に言うもんじゃないよ」
熊さん「いや、できますって。こんなもん、あれでしょ、三三七拍子みたいなもんだ。タタタンタタンと。3-2-1-2だ、ね、3-2-1-2……」
ご隠居「ほう、なかなか見事なものだ」
熊さん「それじゃご隠居、あっしがずっと3-2-1-2のリズムを叩きますんで、ご隠居は1拍ずつズレていってください」
ご隠居「なに、あたしもやるのかい」
熊さん「じゃいきますよ。3-2-1-2、3-2-1-2……」
ご隠居「3-2-1-2……、いま何どきだい?」
熊さん「へえ、9つで」
ご隠居「10−11−12−13……」
熊さん「節子、それ、時そば

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