『バックドロップ・クルディスタン』を見る。在日クルド人一家を追ったドキュメンタリー映画。
この家族はトルコでの迫害を逃れて日本へきた。しかし難民申請を行うも、認められず、強制送還の危機にある。トルコに戻れば死刑になるという。
UNHCR前での座り込み、デモなどの抗議活動はしだいにエスカレートする。政治家や人権団体が支援につき、この一家の父親は、マイクを片手に口汚く日本政府を批判する。六万人もの署名が集まる。しかしあえなく、強制送還となる。
ここで終われば、日本政府は難民に対して、なんとむごい仕打ちをするのか、である。
しかしこの一家は、偽装難民であるということが判明し、おいおい、という展開に変わる。トルコで迫害されていたというのは嘘である、と父親が裁判で認めていた。難民だと言えば日本に滞在できるという噂が広まっており、虚偽の難民申請は、六割に上る。
さて、監督はトルコに飛び、現地でのクルド人差別について取材をする。今はもうそんなにひどい迫害はない、外国に逃げている人は泥棒や殺人をやって本国にいられなくなった人、そんな家族とは縁を切った方がいい、との証言を聞く。
ますますこの家族の真実が、わからなくなる。しかし、24歳の日本映画学校中退の監督は、そうした疑問を追及しない。ただ撮った映像を、並べているだけである。撮影も編集も素人レベル。そのため非常にわかりにくい。
おそらく監督自身が、難民問題など、なにもわかっていないのだろう。この監督に、この問題は大きすぎたのだ。この父親の嘘を真に受けて、一緒に泣くのである。難民家族をダシに、自分探しの旅がしたかったのである。
しかしそれがゆえに、こうした映画を能天気に公開できてしまった。これがバリバリの活動家であれば、難民問題についてマイナスとなるようなこのようなケースは、決して公表しなかったはずだ。
この家族は大声で日本政府を批判し、政治家とマスコミを動かし、六万人もの署名を集めたのだ。それが偽装難民だったのである。トルコで迫害されて逃げてきた、強制送還されれば死刑になる、というこの父親の話のほとんどは、うそだった。ふてぶてしい家族である。この家族をあわれみ、支援していた人々は、なにを思うか。
UNHCRおよび日本政府は、正しい判断をしている。ちゃんと仕事をしている、という話である。こんな映画が広まったら、本当に難民として逃げてきた人たちにも、それを支援している人たちの活動にも、支障が出よう。彼らはうそつきだ、信用してはならない、という政府のプロパガンダにもなりうる映画である。
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