茂木健一郎とラーメンと原発

 夕べテレビをつけたら、『潜入!リアルスコープ』という番組に、茂木健一郎が出ていて、「ラーメン二郎」に行ってラーメンを食っていた。なんでも、この店の人気の秘密を、脳科学で解明するという企画らしい。
 茂木健一郎といえば、京都大学の入試カンニング事件で、受験生が逮捕されたことに激怒し、京大に抗議文を送ってツイッターに「京都大学、お前は死んだ!」と書き、事件を報道した朝日新聞に対しても「クズ朝日新聞」と罵倒した。
 他にも、つぎのような勇ましい言葉をツイッターに残している。

クズ新聞、クズテレビ、クズ大学。オレは、お前たちと仕事をする時は、誠心誠意やるよ。とにかく、ベストを尽くす。一緒に仕事をする仲間は、心から愛する。身体を捧げる。しかしな、組織として、お前たちが終わっていることについては、一ミリとも譲らないぞ。

日本のクズメディア、予備校生が逮捕されて満足か? ここ、世界の未来のことを本当に考え、身を粉にしている#TEDでは、君たちみたいなアホに賛同するやつは一人もいない。恥を知れ。オレは、本当の日本の未来のために、闘う。

 それで夕べのバラエティ番組だが、調べるとこれは過去の総集編で、ラーメン二郎でのロケが行われたのは、昨年のことらしい。それをなぜ大震災後の日本が終わるかもしれない大変な今の時期に放送するのか不明だが、うがった見方をすれば「クズメディア」と罵倒されたテレビ局が茂木健一郎へのあてつけで放送したのかもしれない。こんなバカ番組に喜んで出ていた脳科学者が、なにをえらそうに、というわけだ。
 それで当の茂木先生は、この番組のことをどう考えているのだろうと、夕べのツイッターを見たら、あいかわらず威勢のいいことを書いておられる。

上杉隆さん( @uesugitakashi)のウェブページによれば、活動停止はは本年12月31日をもって、とのこと。まだ8ヶ月ある。その間に日本のメディア状況を変えようよ、上杉さん!

 メディアを痛烈に批判しつつ、バラエティ番組には出演し、日本の未来のために闘いつつ、「ラーメン二郎」にも行く。
 脳科学というのは、いそがしい。
 それで、「ラーメン二郎」を脳科学によって解明した結果が、これ。

ラーメン二郎」に挑戦し、スープの最後の一滴までミッションを完遂する体力と精神力を持つこと。二郎ワールドを愛するジロリアンたる日本人がいる限り、この国はだいじょうぶだ。そう、私は確信したのである。
茂木健一郎 連続ツイート: 連続ツイート ラーメン二郎 より引用

「この味がいいね」と茂木が言ったから四月二日はラーメン二郎記念日

 茂木健一郎は、電気事業連合会の広告にも出ております。
zarutoro.livedoor.biz

 では、対話形式で行われた電事連の広告から、茂木先生のお言葉を引用します。
(『婦人公論』2011年1月号・新春特別座談会/茂木健一郎氏×内田麻理香氏×山下宏文氏、司会:三木哲男氏 2011年、いよいよ実践されます!日本の「エネルギー環境教育」より)

自分たちがおかれている状況を客観的に見れば、原子力発電の果たす役割が大きいこともわかると思います。確かに原子力にはリスクもありますが、リスクがゼロの暮らしなんてありえないでしょう。交通事故や飛行機事故、地震などの災害もあるし、小惑星がぶつかってくる可能性も……。僕たちはそういう世の中に生きているんですね。

(『婦人公論』2010年3月号・茂木健一郎氏×山名元氏 特別対談「脳と原子力、じつは切っても切れない関係です」より)

私たちが持っている記憶のシステムは、感情が揺さぶられるような経験をすると、そのことを「脳」に深く刻むようにできています。ですから、チェルノブイリ原発事故や、まったく違うものではありますが、原子力という言葉から連想される広島や長崎の原爆被害も、ニュースで見た映像などを介して人々の「脳」に鮮明に記憶されている。これは「脳」のメカニズムなので、取り除くのは難しいです。その一方で、人間の脳には論理で理解するという働きもありますから、感情が揺さぶられるような経験を克服してもらうには、筋道を立てた論理的な説明や議論を重ねることが必要です。

つまり、原子力のしくみもリスクもわかっていればこわくない。我々のような研究者の使命は、その論理や根拠を示していくことだと思います。

資源が乏しく、エネルギーや食料の自給率も低い日本が、豊かな暮らしと繁栄を維持していくには、科学技術の力は欠かせません。原子力の果たす役割も大きいと思いますし、先生の研究にも期待しています。
(同上。引用終わり)

koritsumuen.hatenablog.com