「愛のむきだし」的なもの

 一部で評価の高い映画『愛のむきだし』を見たのだが、期待はずれだった。
 おもしろかったところといえば、敬虔なクリスチャンの親子がそれゆえに罪を犯し、神の名のもとにその罪が簡単に赦される、という展開だけだ。ただ、神父が「懺悔」という言葉を使うこともあるのかも知れぬが、カトリックなら「告解」ではないのか。
 園子温というのは当初は寺山修司の亜流のような映画を撮っていたが、最近はマンガみたいな映画ばかり撮っている。『部屋 THE ROOM』の頃が一番よくて、どんどんつまらなくなっているように思う。
 『愛のむきだし』もマンガである。実話を基にしているというが、敬虔なクリスチャン一家が棄教し、さらにカルト教団に入信するなどということには、まったくリアリティが感じられない。カルト教団に入った妹を兄が奪回するというストーリーは、塩田明彦監督の『カナリア』という先行作がある(兄と妹の状況はちがうが)。とにかく、四時間という上映時間は長すぎる。
 それよりも、このような映画を賞賛する評論家の態度がきもちわるい。
 セックスや暴力が描かれていれば、それゆえに賞賛する人たち。変態行為と人殺しに理解を示し、既成秩序への反逆を主張する人たち。俗物を自認し、享楽だけを追求する人たち。
 それは、三島由紀夫が『美しい星』の中で描く、次のような人たちにそっくりだ。

 この人たちは庶民芸術や庶民的な思想・信仰などに深い思し召しを寄せており、低俗なものほどありがたがり、世間で奇妙な人気のあるものは、みんな自分の陣営に引き入れようとしていた。
新潮文庫・168ページから引用)

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