二世タレント考

芸能人の子供が続々とデビューしているようだが、それはべつにかまわない。もともと芸能というのは親から子へ、師匠から弟子へ、伝承されてきたものだからだ。
しかし最近の二世タレントは、どれもあまり売れてないようだ。
考えるに、これは芸の質が変わってしまったからではないかと思う。テレビタレントにどんな芸があるのかはさておき、それは決して師匠の芸を受け継いでどうにかなる、という性質のものではない。
昔ながらの師弟関係が成立するためには、伝統的な芸の定型が残っていなければならない。さらに、その芸を身につければ、客を喜ばすことができるという前提が必要である。
たけし、タモリ、さんま、とんねるず、その他テレビで売れている芸人というのは、寄席に出ているような落語家や漫才師とは明らかにちがう。そうした伝統的な芸を破壊して、新しい芸を創出したところに、テレビでの人気がある。
さんまに話芸があるのはたしかだが、それがどういうものか定型化を試みるのは難しい。さんまの話芸は、さんまにしかできない。他のテレビタレントの芸も、そういった性質のものである。
そういう性質の芸を、子供や弟子に伝えることはできない。たとえ師匠の芸をまねることができても、そんな二番煎じでは、もはや客は喜ばないのである。二世タレントといえども、結局は実力勝負にならざるを得ない。親の芸を継承するのではなく、破壊して、新たな芸を創出しなければならない。
しかしその芸とて、しょせん一代かぎりで、本人が死ねばその芸も消える。


「おれのファンで、おれみたいになりたいって言うやつがいるんだけど、そういうやつに限って、大学を中退したとか、仕事をいくつも変わったとか、おれのそういうところだけ真似してるんだよ」という意味のことを、ビートたけしがテレビで言っているのを聞いたことがある。
爆笑問題太田光というのも、たけしや談志の悪いところだけ真似しているように思う。