映画はハウス

大林宣彦監督の『HOUSE ハウス』を見ました。
いやあ、おもしろかった。CGもなかった時代にどうやってあの映像を撮ったんだろうというような、凝りまくった映像の連続でとにかく楽しい。この作風を受け継いでいるのは『下妻物語』か。
それでDVDに収録されている大林監督のロングインタービューがまたよかった。
それまで、全国で配給される映画を監督できるのは、映画会社の社員に限られていた。だから小津は松竹の社員だったし、黒澤は東宝の社員だった。
そういうわけで映画監督になるにはまず映画会社に入社しなければならないのだが、たとえ監督を希望していても人事の都合で宣伝部に回されたりするから、必ずしも才能のある人が映画監督になれるわけではない。
小津や黒澤というのは、たまたま彼らに才能があったからよかったものの、もし小津が東宝の社員で、黒澤が松竹に入社していたら、日本映画の歴史は大きく変わっていただろう。
つまり日本映画の黄金期というのも、そうした運や偶然が作用した結果なのである。
しかし映画が斜陽産業となり、その改革のために外部の才能ある人に映画を撮らせようという動きが出てくる。そこで抜擢されたのがテレビCMで活躍していて、『EMOTION・いつか見たドラキュラ』などの自主映画で高い評価を得ていた大林宣彦氏だったのである。
そうした諸々のしがらみを破って製作されたのが『ハウス』だったわけね。この映画の成功によって、そうした映画会社の規制は打ち砕かれることになる。
これ以降、大森一樹森田芳光など、アマチュアの自主制作映画で評判を得た監督が、そこからプロとして商業映画を撮らせてもらえるような道筋ができたのも、大林宣彦という先駆者がいたからこそなのである。


HOUSE [DVD]

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