暖かくなりますと、各地で、「どろんこ祭り」なるものが開催されます。
どろどろの田んぼの中で、大人も子供も全身を泥だらけにしながら楽しげに遊んでいる映像を、ニュースなどで見るわけですが、
破傷風にならないのか、と老婆心ながら心配になります。
破傷風という病気はなかなかに恐ろしいもので、野村芳太郎監督によって『震える舌』という映画にまでなっております。
この映画は、一度見てしまえば、ぜったいに破傷風にだけはなりたくない、と思わせるすごさがありまして、あまりにすごい描写のために、おそらくは放送禁止にされてしまったのではあるまいか。
映画秘宝『底抜け超大作』(洋泉社)に、リリーフランキーのレビューがあります。そこから引用。
『震える舌』。いーんですかね?
1980年では、こーゆーのアリだったんですか?内容は、ごく平凡な家の子供がドロンコ遊びから破傷風にかかり、その看病に疲れた夫婦の心の動きを通して、家族の絆みたいなモノを描いていくという、社会派の原作のハズなんですが……。しかし。
完全にホラー映画にしちゃってます!
実在する病気を扱った闘病映画なワケですから当然、化け物も悪霊も出てこないんですけど、病気の子供のポジションは完璧にダミアン。もしくは、『エクソシスト』のリーガン。
<略>どこまで、本当の破傷風の症状に即しているのかわからないけど、どうやら音や光がマズイらしく、その刺激を受けるたびに、子供が舌を噛み切って背骨折れそうにケイレンを起こす。
これを見せる映像の手段が、一転の曇りもないくらいにホラーの手法なんですな。
<略>「ギィーーーーーー!(子供の悲鳴)」
子供のベロ、ブッチー!
血ィドバー!
背骨ボッキー!
十朱キャー! 渡瀬タラ〜。SEドーン。
これを延々繰り返します。
映画のラストでは、子供の病気も治り、
「チョコパン食べたいよォー」なんて、両親に甘えるのですが、
リリー氏によると、これは、野村芳太郎監督の前作、『鬼畜』の中で、子供を殺そうとする緒方拳が、クリームパンの中に毒を入れて、子供に無理やり食わそうとするシーンを、思い出させ、さらに怖い。
ということですが、それはさておき。
どろんこ祭りのニュースはあっても、破傷風に感染したというニュースがないのは、どういうわけであろうか。
予防注射によって、完全に防げるのか。現代人は、知らぬ間に、免疫でもついたのか。
もし、子供が破傷風に感染したら、全国のどろんこ祭りは中止になるだろうか。
しかし、何十年も続けてきた祭りで、これまで、けが人もなく、住民が楽しみにしている祭りを、不幸にも感染した一人の患者のために取りやめてしまってもいいのか。どろんこエステは、大丈夫か。
などと、老婆心ながら、思います。