「キル・ビル」おそるべし

 時が経つにつれて、クエンティン・タランティーノの『キル・ビル』が、いい映画に思えてきました。
 まあ、「2」の方は、退屈ですが、その退屈さも含めて、おもしろい映画だな、と。
『レザボアドッグス』に、キューブリックの『現金に体を張れ』のオマージュを見た人は、タランティーノ監督に正統派の映画人の教養があると、誤解したのではないかと思うのですが、『パルプフィクション』に引用された旧約聖書の言葉が、エゼキエル書第25章17節にはなく、千葉真一主演のカラテ映画『ボディガード牙』の序文の引用だった、という衝撃の事実を知って、なんかおかしいぞ、と思ったはずです。
 それでまあ、おれも、ひまを見つけては、『キル・ビル』の元ネタをたどる旅を続けているわけですけど。
 TVドラマ「服部半蔵/影の軍団」とか、 TVドラマ「柳生一族の陰謀」とか、「吸血鬼ゴケミドロ」とか、「フランケンシュタインの怪獣サンダ対ガイラ」とか、なんで、そんなもんまで見てんだよ、タランティーノ!

ゴーゴー夕張(栗山千明)が振り回す鉄球からシャキーンと刃が出るときに一瞬、ドイツのサイケ・バンドNEU!(ノイ)の曲「スーパー16」という曲が流れる。この場合もタランティーノはNEU!のファンでも何でもない。この曲はジミー・ウォングが監督主演した「片腕カンフー対空飛ぶギロチン」(75)で、空飛ぶギロチンからシャキーンと刃が出る時に、例によって無断使用されていたのだ。
(参考:「キル・ビル」元ネタ辞典より)

 そんなことまで、わかるわけねえよ、タランティーノ!

 パロディとか、オマージュとか、引用とかそういう手法はゴダールが良く知られているけれども、おれにとって、ゴダールの映画に引用されているものは、遠いし、切実なものでもないし、あまり関心がないし、べつにどうでもいいのだが、タランティーノが見た映画は、おれも見たいという気にさせられる。
『修羅雪姫』も『直撃地獄拳』も『子連れ狼』も、見たし。
「2」で終わらずに、タランティーノには、これからもずっと「キル・ビル」を、作り続けてもらいたい。
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