チョコ食ってやせるなら何食ってもやせる

 Eテレ『ドキュランドへ ようこそ!▽チョコレートで痩せる?~ダイエット商法のからくり』が、おもしろかった。
 ドイツ人のジャーナリスト達がウソの科学論文をでっち上げる。
 題して「チョコレートはダイエットに効果がある」「チョコレートを毎日大量に食べればやせる」
 一見すると、ばかばかしいこんな説を、ジャーナリスト達は専門家の協力を仰ぎながら、科学的に立証していくのだ。まずは実験。一般人からダイエットの実験に協力してくれる人を募集する。16人集まって、それを3グループに分けた。

A:低炭水化物+チョコ(朝晩にカカオ83%の板チョコを半分ずつ食べる)。
B:低炭水化物のみ食べる。
C:特になにもせず、普通の食事をする。

 これを3週間続けて、どれが最もダイエット効果があるか計測して統計をとる。立派な科学的実験である。しかしながら「チョコレートダイエット」の実証実験である以上、Aグループが最もやせてくれないと困る。そこでいろいろ細工をする。
 まず前もって被験者の性格や生活習慣を調査して、ダイエット意識が高く、まじめに実験に協力してくれる人をAグループに集める。事前に、効果が出そうな人を選抜するわけだ。なまけもので、約束を守らないようなやつは、BかCグループに振り分けておく。さらに統計学のプロに頼んで、体重や血液データの中からいかにも効果があったように見えるデータのみを抜き出してもらい、グラフ化する。
 その結果、チョコを食べたAグループだけが、なんと3週間で体重が10%も減った(というデータが得られた)。
 これは捏造ではない。都合のよいデータだけを使うのは、「科学論文」ではよくあることだという。ダイエット産業に関わる医者や科学者の多くが、こうした方法で論文を書いているのだ。スポンサー企業から研究費を出してもらい、スポンサー企業に都合のよい実験結果を公表して、あやしげなダイエット方法に、科学のお墨付きを与えているのだ。これが彼らの考える「科学」なのである。
 さて、ジャーナリスト達がでっち上げた論文は、みごと有名な医学誌に載った。そのことをプレスリリースすると、ドイツで一番発行部数が多い新聞「ビルト」が一面で取り上げた。それを見て英国の大衆紙「サン」、米国のネットテレビ、インドの大手紙、豪州の女性誌と次々と情報が拡散されて、全世界に「チョコレートダイエット・ブーム」が巻き起こった。
 で、日本は、とネットで検索すると、でるわでるわ、チョコレートダイエットの正しいやり方って、ちょっとそこの、お姉さん。
 このジャーナリスト達は「ソーカル事件」を、ダイエット業界を舞台にやったわけだね。ソーカル事件ポストモダンがデタラメだとあきらかになったにもかかわらず、いまだに信奉している者がいるように、いまだにやせると思ってチョコレートをバクバク食ってるやつがいるわけだ。

www.j-cast.com
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