もし文豪たちが著作権侵害で訴えたら

 池村聡『はじめての著作権法』は、次のように書いている。

 そして、同様に、いわゆる「作風」と呼ばれるものも、それ自体は著作物ではありません。ちょうど本書執筆中に、神田圭一・菊池良『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』(宝島社、2017年)という本がヒットしているという記事をネットニュースで読みました(そして、その後本屋で立ち読みしました)。この本は、タイトル通り、村上春樹さんなど、様々な文豪たちの文体でカップ焼きそばの作り方の説明文が書かれているという大変ユニークな本ですが、文豪たちの「作風」「文体」それ自体は著作物ではありません。したがって、この本を執筆したり出版したりするに際して、文豪たちの許可を得ずとも著作権侵害には当たりません。(33-34頁)

 はたして、そうか。
『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』という本は、文豪たちの「作風」をまねしたものではない。文豪たちの著作物そのものを改変したものである。
「1973年のカップ焼きそば」だの、「キッチンや 薬缶飛び込む 水の音」だの、「『このかやくがいいね』と君が言ったから七月六日はカップ焼きそば記念日」だの、「カップ焼きそばの作り方を全部言えるようなガキにだけは死んでもなりたくない」だの、あきらかに他人の著作物である文章の一部を、カップ焼きそばの作り方に関連する語句に置き換えているだけである。何の芸もない。
 たとえ高尚なパロディであっても、つねに著作権侵害の問題が伴うのであるから、このような幼稚でレベルの低いパロディは当然、著作権侵害に該当する。

はじめての著作権法 (日経文庫)

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