一寸のデザインにも五分の魂

 いわゆるデザイン・シンキングに関する本を何冊か読んだが、村田智明『問題解決に効く「行為のデザイン」思考法』が、わかりやすかった。
 たとえば、ハンガーについて考える。人は外出先から自分の部屋に戻ってきたら、まず上着を脱いでハンガーにかける。そして次にズボンを脱いでハンガーにかけようとするのだが、ここで問題が起こる。さっきかけた上着が邪魔になるのだ。そこで、上着をハンガーからはずして、ズボンをハンガーに通し、それからまた上着をかけ直さなければならない。二度手間である。
 これは、ハンガーそのものの「バグ」だと著者は言う。人はまず上着を脱いで、それからズボンを脱ぐ。現状のハンガーはそうした手順を考慮していないから、こんな不便なデザインになってしまったのだ。
 ではどうすればいいか、と考えることで新しいデザインが生まれる。
 気をつけて見れば、いたるところに「バグ」を発見することができる。著者はそれをいくつかに分類してるが、どれもなるほどと思わせるものだ。たんに美しけりゃいいってもんじゃない。iPhonの美しいデザインは、それを傷つけたくないからカバーをつける、という逆の効果をもたらした。
 文房具でも日用品でも、いろいろな発見の上に作られてるんだな。
 

問題解決に効く「行為のデザイン」思考法

問題解決に効く「行為のデザイン」思考法