鴎外の漫談

 プレミアムステージで永井愛の「鴎外の怪談」を見た。怪談というからお化けでも出てくるのかと思ったら、くだらぬ左翼芝居だった。井上ひさしの評伝劇と同じで、歴史上の人物の口を借りて、自分の意見(平和とか民主主義とか)を訴えるわけだ。大逆事件で死刑判決を受けた幸徳秋水らがいよいよ処刑されるのを知り、森鴎外はこれを憂いて、次のように言う。

 どんなに言いつくろっても、無実の者が殺されることに変わりはないんだ。その殺人に、おれとおまえが手を貸していることも。
 おれは日清・日露の戦に軍医として従軍した。おびただしい遺体を見た。だがその中に、おれの殺した者はいない。おれはつねに医者として命を救う側にいた。今回初めて人を殺すことになる。いっぺんに12名もだ。

 へえ、そうですか。森鴎外先生は立派な軍医ですなあ。
 脚気の原因は細菌であるという誤った判断によって、兵隊に麦飯を食わせず、脚気によって多くの兵隊の命を奪っておきながら、どの口でそんなご高説を。