なぞのチャンチキおけさ

 三波春夫のヒット曲は「チャンチキおけさ」であるが、この歌詞は奇妙である。「知らぬ同士が小皿たたいてチャンチキおけさ」というのであるが、ここで歌われている「チャンチキおけさ」とはいかなる歌か。三波春夫のデビュー以前に「チャンチキおけさ」という歌がまず存在し、それを歌っているというのならわかる。しかし三波春夫が「チャンチキおけさ」を歌う以前に、「チャンチキおけさ」は存在しない。
 だから「知らぬ同士が小皿たたいて」歌っていたのは「チャンチキおけさ」ではなく、別の「おけさ」と思われるが、三波春夫の「チャンチキおけさ」がヒットすることによって、本当に「知らぬ同士が小皿たたいてチャンチキおけさ」を歌うようになったのである。
「知らぬ同士が小皿たたいてチャンチキおけさ」という歌詞を、知らぬ同士が小皿たたいて歌うのだ。さらに、「知らぬ同士が小皿たたいてチャンチキおけさ」という歌詞を、知らぬ同士が小皿たたいて歌っている情景を、三波春夫が「チャンチキおけさ」で歌うのである。そして三波春夫の「チャンチキおけさ」を、今夜もまたどこかの宴席で知らぬ同士が小皿たたいて歌うのである。