違憲訴訟は権利の濫用である

 安保関連法が憲法9条に違反するというので、憲法学者らが集団訴訟を起こす気だと、NHKのニュースでやっていて唖然とした。

 19日成立した安全保障関連法について、憲法学者などは「憲法9条に違反する」として今後、集団で国に対する裁判を起こすことにしています。このほかにも複数の個人やグループが提訴を準備していて、法律の合憲性は、司法でも争われることになります。
 集団的自衛権の行使を可能にすることなどを盛り込んだ安全保障関連法は、19日未明の参議院本会議で可決され、成立しました。
 この法律について、憲法学者慶應義塾大学小林節名誉教授は「法律は憲法9条に違反し、平和に暮らす権利が損なわれる」として、研究者などおよそ100人の原告団を作り、今後、国に賠償を求める訴えを起こすことにしています。
(9月19日 4時16分 NHK ONLINE)

 こんなもの却下されるに決まっている。
 裁判所による違憲審査には大別して、抽象的違憲審査制と、付随的違憲審査制とがある。
 ドイツなどでは、違憲審査をするために特別に設けられた憲法裁判所があって、具体的事案と関係なく、抽象的に違憲審査が行われる。一方、アメリカなどでは通常の裁判所によって、具体的な訴訟事件の中で、必要な限度で付随的に、違憲審査が行われる。わが国は後者であり、たとえば安保関連法によって戦死者が出たというような具体的な事件が起こらない限りは、裁判所に違憲審査権はない。
 彼らが訴えの根拠とする「平和に暮らす権利」というのは、憲法前文に書かれた「平和的生存権」と言われるものだが、その内容は不明確であり、裁判で争うことのできる具体的な法的権利性を認めることは難しい、というのが「長沼事件」での最高裁の判断である。
 さらに、「砂川事件」や「苫米地事件」の判例にあるように、極めて高度に政治性のある行為については、裁判所の司法審査の対象とはならない。だからこんな裁判はやっても無駄である。そもそも権利の濫用として民法にも違反するし、憲法にも違反する。
 それがいやだというのなら、改正すればいいのである。

民法 第一条
3  権利の濫用は、これを許さない。

憲法 第十二条
この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

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