すばらしき経済学

 NHKの「オイコノミア」を何回か見たが、くだらなかった。日常生活のできごとを経済学の視点から解説するというのだが、だからどうした、という内容である。
 たとえば、アメリカでの実験で、退職者協会が弁護士協会にある依頼をした。退職した人たちのために1時間3000円で相談に乗ってほしいと頼むと、多くの弁護士は断った。こんどは無料で退職者の相談に乗ってほしいと頼むと、多くの弁護士が引き受けた。
 この場合、お金の話が出ると弁護士は市場規範で考えるため、3000円の報酬では足りないとの判断をする。しかし、困っているので助けてくださいと依頼されれば、ボランティア精神や道徳に基づいた社会規範で考えるため、多くの弁護士が無償で引き受けるのだ。
 そこで番組は、これを経済学の理論で「アンダーマイニング効果」というのだと説明する。
 で、「アンダーマイニング効果」とは何かといえば、ひとの役に立ちたいというボランティアに、報酬を支払うと、かえってモチベーションを下げてしまうことがある、というものである。
 これは、たんにAという現象を、別の言葉で言い換えただけである。
「ことわざ」がそうである。
 たとえば、相手が自分に対して好意を持てば、自分も相手に好意を持つということがある。これを、ことわざで「魚心あれば水心」という。魚に水と親しむ心があれば、水もそれに応じる心を持つという意味である。
 だからどうした、である。こんな番組を見て、頭がよくなったりするものか。
 そもそも教育は、個人の能力の向上にほとんど貢献しない。個人の能力は、教育を受ける前にすでに決まっている。そして、人々は自分の能力を誰よりもよく知っている。それでは、なぜ教育という仕組みがあるのかというと、たとえば大学を卒業したということで、自分の能力の高さを他人にアピールできるからである。このように、教育は、自分に能力が備わっていることを他人に知らせる手段に過ぎない。学歴を手に入れるために人々は高い授業料を払って学校に通う。そこでなにを勉強したかは全く重要ではない。
 これを経済学で「シグナリング理論」という。(参考:小塩隆士『教育の経済分析』)

教育の経済分析

教育の経済分析