人の振り見てなんとやら

 岡野宏文豊崎由美『読まずに小説書けますか』(初版・メディアファクトリー)を読む。演劇雑誌「新劇」の元編集長で、「小説のみならず戯曲などにも深い造詣を持ち」(著者紹介文より)という岡野宏文が次のように述べている。

あと、聖書つながりでおすすめしたいのが、井上ひさしさんの『珍訳聖書』。これ、入れ子形式の戯曲で、六度ものドンデン返しが用意されてるんですよ。吃音者の矯正の教室なんだと思ってると、それはストリップ劇場のコントなんだということがわかったと思ったら、矯正教室の教授が殺される殺人劇になりと、ころっころひっくり返されて、読者は翻弄されまくるんですよ。しかも、ちゃんと最後に全部が回収されていく。(P223より引用)

 しかし、これは井上ひさし『日本人のへそ』のあらすじである。『珍訳聖書』にもストリップ劇場が出てくるので、混同したのだろう。
 同書において豊崎由美は、道尾秀介『向日葵の咲かない夏』の中に、シャーロック・ホームズのことを「シャーロック・ホーム」としている誤記を見つけ、いつもの調子でバカにしているのだが(P215)、共著者のまちがいを見逃すのは、いかがなものか。