NHKオンデマンコ

 NHK-BSのプレミアムステージで「頭痛肩こり樋口一葉」の放映があったのだが、じつはこの舞台劇には「ちっちっちんぽの毛、まけたらまんこの毛」というセリフがある。これは劇中で歌われる「じゃんけん唄(わらべうた)」の歌詞なのだが、北原白秋編『日本伝承童謡集成』にも収録されている由緒ある庶民の唄である。
 そのわらべうたを歌う役が、宝塚スターの愛華みれというので、いやがうえにも期待が高まったのであるが、NHKはその歌詞はおろか前後のシーンをばっさりカットして放映しやがった。おのれ、NHKである。
 おれんちはBS見れないので、わざわざNHKオンデマンドで見たのだが、それなら最初から、「ちっちっちんぽの毛、まけたらまんこの毛」という歌詞はカットしますと書いとけよな。こっちは「ちっちっちんぽの毛、まけたらまんこの毛」というわらべうたが楽しみで見てるんだからよ。原作はおまえらの大好きな平和主義者の井上ひさしなんだから、「ちっちっちんぽの毛、まけたらまんこの毛」という歌詞をカットせずに放送しろよな。そもそも井上ひさしNHK放送作家をやってたときに、視聴者から下品だ低俗だとさんざん批判されて、放送局の規制とも戦って、それに嫌気がさして演劇の方へ行ったという経緯があるんだから、こういう検閲をまだやってんのか、言葉狩りだろ、井上ひさしが生きてたら激怒するぞ。くそNHKが。ちなみに、紀伊国屋書店から出ているビデオでは、ちんぽ、まんこと歌う場面はそのまま収録されている。
 まあ、「ちっちっちんぽの毛、まけたらまんこの毛」というわらべうたは、カットしてもべつにストーリーに影響ないんだけど、そういうシーンにあえて「ちっちっちんぽの毛、まけたらまんこの毛」と歌わせるところに井上ひさしの体制批判と女性嫌悪が表れているわけで、だからこそ「ちっちっちんぽの毛、まけたらまんこの毛」はカットしたらだめなんだよ。樋口一葉の人生をすべて女性の登場人物でやるというフェミニストが喜びそうな舞台であえて女優に「ちっちっちんぽの毛、まけたらまんこの毛」と歌わせるところに井上ひさしの悪意があるわけだから、むしろこの舞台は「ちっちっちんぽの毛、まけたらまんこの毛」がすべてだとも言えるわけよ。庶民とはちんぽの毛であり、まんこの毛なんだよ。それこそが井上ひさしがこの劇に込めたメッセージなんだよ。
 そういやこないだ、「亀田音楽専門学校」という番組で槇原敬之が「出前一丁」のCMソングを歌ってたし、山口百恵の「プレイバックPart2」を「ポルシェ」の歌詞のまま歌っていたが、おいおい、いつからNHKでは宣伝OKになったんだよ。こんな商業歌謡は流すくせに、庶民の血と涙がしみこんだ魂の叫びであるわらべうたの「ちっちっちんぽの毛、まけたらまんこの毛」はカットかよ。「ヨイトマケの唄」だってよく聞けば、貧しい土方の息子が大学を出てエンジニアになるという美談になってるわけで、それってやっぱり土方を差別してるじゃねえか。
 それにしても、小泉今日子の演技がうまいとか言ってるやつは、この舞台の若村麻由美愛華みれを見てから言え。